最近、ぐっすり眠れていますか?――40〜50代に急増中「眠りの不調」の正体とは

最近、ぐっすり眠れていますか?――40〜50代に急増中「眠りの不調」の正体とは

「寝つきが悪くて、布団に入ってもなかなか眠れない」「夜中にふと目が覚めてしまう」「仕事の疲れもあるはずなのに、なぜか眠れない」——そういった不眠を訴える40〜50代の患者さんが増えています。
また、「しっかり寝ているのに疲れが抜けない」「朝起きてもスッキリしない」といった“眠りの質”の低下に悩む方も少なくありません。

実はこれらの状態、どちらも立派な「睡眠障害」にあたります。眠れないことも、眠っているのに回復できないことも、心や体に何らかの不調が起きているサインかもしれません。「年齢のせいかな」「忙しいから仕方ない」と片づけてしまいがちですが、その背後には、40〜50代特有のホルモンバランスの変化が関わっている可能性があります。

今回は、ホルモンバランスと睡眠の関係に触れながら、良質な睡眠をとるための対策についてお伝えします。

加齢とともに変わる睡眠の質

年齢を重ねると、睡眠の「質」や「リズム」に少しずつ変化が現れてきます。若い頃は、一度眠ってしまえば朝までぐっすり眠れたという方も多いでしょう。しかし40代・50代になると、「夜中に目が覚める」「朝早く目が覚めてしまう」といった悩みが増えてきます。

これは、加齢により深い眠り(ノンレム睡眠)が減り、浅い眠り(レム睡眠)が増えることが一因です。眠りが浅くなると、ちょっとした物音や尿意、夢などをきっかけに目が覚めやすくなります。

夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」や、必要以上に早く目が覚めてしまう「早朝覚醒」は、睡眠時間の不足を招き、「眠れた感じがしない」という感覚を残します。これにより日中の眠気やだるさ、集中力の低下なども引き起こされます。

また、「睡眠時間は確保しているのに疲れが取れない」という場合、睡眠の深さに問題がある可能性があります。

さらに、体内時計(サーカディアンリズム)の働きも年齢とともに変化します。これは約24時間周期で体温やホルモン分泌、眠気のタイミングなどを調整する体内のリズムです。

加齢による変化は自然なことですが、サーカディアンリズムにはホルモンの影響もあり、特に注目したいのが男性ホルモン「テストステロン」の低下です。テストステロンは夜間に分泌が高まり、日中に低下するリズムを持っています。このリズムが乱れると、サーカディアンリズム自体にも影響を及ぼし、睡眠障害を引き起こす可能性があります。

テストステロン低下とストレスが睡眠に及ぼす影響

前述のように、テストステロンの低下によって起こる男性更年期では、睡眠障害を訴える方が少なくありません。

加えて、40〜50代の男性は、仕事や家庭での責任が増え、無意識のうちにストレスをためこみやすい時期でもあります。強いストレスはテストステロンを低下させるだけでなく、自律神経のバランスも乱します。

自律神経は、呼吸・血圧・体温などをコントロールする神経で、活動時に働く「交感神経」と、休息時に働く「副交感神経」から成り立っています。本来、夜になると副交感神経が優位になって体がリラックスし、眠りやすくなるのですが、ストレスが強いと交感神経が優位なままとなり、寝つきの悪さ・浅い眠り・途中覚醒といった睡眠障害を引き起こしてしまいます。

寝る時間を増やすだけでは解決しない睡眠障害

睡眠障害には、不眠だけでなく、浅い眠りや途中覚醒といったケースも含まれます。そのため、ただ寝る時間を延ばすだけでは、根本的な解決にはなりません。

40〜50代の睡眠改善には、生活習慣の見直しとテストステロン低下の予防・対策という両面からのアプローチが重要です。

「最近眠れない」「寝ても疲れが取れない」と感じたら、まずは以下のチェックリストでご自身の状態を確認してみてください。

【チェック1】不眠を招く生活習慣

□ 寝る直前までスマホやパソコンを見ている

□ 夕方以降もコーヒーや緑茶などカフェインを摂っている

□ 寝酒の習慣がある(寝つきは良くても夜中に目が覚める)

□ シャワーだけで済ませて湯船に浸かっていない

□ 日中、ほとんど体を動かしていない

□ 朝起きても太陽の光を浴びていない

□ 就寝・起床時間が日によってバラバラ

□ 寝る前まで仕事や考えごとをしていて頭が冴えている

ひとつでも当てはまる場合、睡眠障害のリスクがあります。今日から少しずつでも生活リズムを整えてみましょう。

【チェック2】男性更年期のサイン

□ 寝つきが悪い

□ 就寝後に何度も目が覚める

□ 昼間に強い眠気を感じる

□ やる気・意欲が低下している

□ 集中力が続かない

□ イライラしやすく、気分の浮き沈みが激しい

□ 性欲や勃起力の低下を感じる

□ 筋力・体力の低下を感じる

□ ストレスが強く、休んでも気分が晴れない

これらはテストステロンの減少によって起こる「男性更年期」の代表的なサインです。その中でも「眠りの質の低下」は見落とされやすい初期症状のひとつです。

今日からできる睡眠改善セルフケア

  1. 朝起きたら太陽の光を浴びる

体内時計をリセットし、メラトニン(眠気を誘うホルモン)の分泌を整えましょう。

  1. 軽い運動を習慣にする

ウォーキングやストレッチなど、30分程度の運動を取り入れることでストレス軽減にもつながります。

  1. 就寝1〜2時間前にぬるめのお湯で入浴

38〜40℃の湯に15分ほど浸かると副交感神経が優位になり、自然な眠気を促します。

  1. 就寝前はスマホやテレビをオフにする

深呼吸などで脳をクールダウンさせましょう。

  1. カフェイン・アルコールを控える

カフェインは覚醒作用が長く残り、アルコールは眠りを浅くするため、どちらも夕方以降は控えるのが理想です。

テストステロンを意識した生活習慣

  1. 過度なストレスをためこまない

音楽、瞑想、趣味など、自分なりのリラックス法を持ちましょう。

  1. 適度な筋力トレーニングを行う

筋肉への刺激はテストステロンの分泌を促進します。

  1. タンパク質・亜鉛・ビタミンDを意識して摂る

テストステロンの生成を促す栄養素を取り入れましょう。

  1. 睡眠を後回しにしない

テストステロンは睡眠中に分泌されます。「寝る時間を削って働く」はむしろパフォーマンスを下げる原因になります。

睡眠が変わると、疲れにくくなり、日中のパフォーマンスも変わります。睡眠の改善は、男性更年期の対策にも繋がります。年齢のせいと諦めず、今できるケアから少しずつ始めてみませんか。

この記事の監修者

伊勢呂 哲也

医療法人インテグレス理事長
大宮エヴァグリーンクリニック 理事長・院長
東京泌尿器科クリニック上野/
池袋消化器内科・泌尿器科クリニック/
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長

泌尿器科・消化器科の専門領域で年間3万人の外来診察を行う。著書、テレビ出演歴多数。専門Youtubeチャンネルは18万人以上の登録者(2025年1月現在)
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