最近、太りやすくなった…?——年齢で変化する体のメカニズム

食事や睡眠、運動量など、生活習慣は若い頃と変わらないのに、なぜか体重が増えていく…そんなふうに感じていませんか?

40代・50代になってから、「お腹まわりが気になる」「運動しても体重が落ちない」といった、体の変化を実感する人は少なくありません。
「 若い頃は、少し食事を控えて運動すればすぐに体重が戻ったのに、今はなかなか効果が出ない」などのもどかしさを感じている男性も多いのではないでしょうか。

実は、年齢を重ねることで、代謝やホルモンバランスに大きな変化が起きており、その変化が体重増加や太りやすさと深く関係しています。しかし、体の変化を知り、対策することで適正な体重を維持することもできます。
今回は、体重が増加する謎と対策について解説していきます。

加齢とともに変わる体のメカニズム

年齢を重ねるにつれて、体の中ではさまざまな変化が起こります。その変化はじわじわと長い年月をかけて進み、40代〜50代頃に顕著になってきます。中でも注目すべきは、「基礎代謝の低下」と「筋肉量の減少」、そして「活動量の減少」です。

基礎代謝の低下

基礎代謝とは、私たちが安静にしていても消費するエネルギー、つまり「生きているだけで消費されるカロリー」のことで、心臓を動かしたり、呼吸をしたり、体温を保ったりと、命を維持するために使われています。

この基礎代謝は10代〜20代前半をピークに、年齢とともに徐々に低下していきます。とくに40代以降はその変化が著しく、20代と比べると1日に消費するカロリーが大体10〜100kcalほど少なくなります。基礎代謝が低下すれば、同じものを食べて、同じだけ動いても、若い頃より太りやすくなってくるのは当然の現象ともいえます。

筋肉量の減少

加齢とともに筋肉は少しずつ減っていく傾向にあり、意識的に運動しない限り自然に戻ることはありません。こういった筋肉の低下が、基礎代謝に影響を与えます。

筋肉は、基礎代謝の大きな部分を担っている組織であり、筋肉量が低下すると、消費エネルギーが減っていまいます。 筋肉が落ちる → 代謝が下がる → 太りやすくなるという、連鎖的な悪影響が出てくるのです。

運動量の低下

40代〜50代になると、仕事や家庭の忙しさ、体力の衰えから、意識せずとも日常的な活動量が減ってきます。若い時は考える前に動いていたものが、年を重ねるとともに面倒に感じるようになったという話もよく聞かれます。運動量が減れば、1日あたりの消費カロリーが減少し、体重が増加する原因となります。

このように、「太りやすくなる」というのは、単に食べすぎているからではなく、加齢による自然な変化が影響しています。しかし、正しく理解して向き合うことで、コントロールすることも十分可能です。そのために注目してほしいのが、男性ホルモン(テストステロン)です。

テストステロンの減少が引き起こす身体の変化

加齢による体重増加の背景には、テストステロンの変化が深く関わっています。

テストステロンは、男性にとって重要な、筋肉の維持、脂肪の燃焼、骨の強化、性機能の維持、さらには意欲や集中力のコントロールにも関与し、まさに「男らしさ」を支えるホルモンです。ところがこのテストステロンは、40代後半から50代にかけて急激に減少する傾向にあります。

テストステロン減少と体重増加の関係

前述したようにテストステロンが減少すると、筋肉量が落ちて基礎代謝が低下し、脂肪が燃えにくくなります。その結果、特にお腹まわりに内臓脂肪がつきやすくなり、体重が増加する傾向になります。

さらに、テストステロンの減少によって、疲れ易くなったり、やる気の低下といったメンタル面への影響も現れ、活力が落ち、活動量が減り、その結果、体重が増加するという悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。

こうした変化は、年齢のせいと見過ごされがちですが、実は「男性更年期」のサインである可能性があります。テストステロンの減少は心身にさまざまな影響を及ぼし、男性更年期を招く原因となるため、早めの気づきと対処が重要です。

体重増加と男性更年期

体重増加が男性更年期のサインである場合、体重増加だけでなく、他にも身体の変化が現れてきます。テストステロンの分泌低下により、さまざまな不調が現れる状態で、次のような症状が見られます。

  • 疲れやすく、朝からだるい
  • 気分が落ち込みやすくなった
  • 仕事への集中力が続かない
  • 性欲の低下や睡眠の質の低下を感じる

こうした症状が複数当てはまるという方は、単なる「加齢」や「運動不足」ではなく、男性更年期が根本的な原因となっている可能性があります。

男性更年期は、女性の更年期と違って目立ちにくく、気づきにくい特徴がありますが、「体重が増えた」「お腹がでてきた」といった目に見えるサインは、身体があなたに発している注意信号と捉えてみてください。対策を講じることでさらなる悪化を防ぐことができます。

男性更年期に負けない体重管理

男性更年期による体の変化に対して、無理なダイエットや急な運動を始めても、頑張りすぎることがかえって負担となり、悪化する原因となります。40代〜50代の男性にとって大切なのは、生活習慣全体を整えることです。

ここでは、今日からでも実践できる4つの対策を提案していきますので、できることから取り入れてみてください。

食事は減らさず整える

テストステロンの分泌を保ち、内臓脂肪の蓄積を防ぐためには、栄養バランスの取れた食事が不可欠です。以下のポイントを参考に食事をとることで無理なく整えることができます。

①たんぱく質をしっかり摂る

筋肉の維持や代謝の維持には、肉・魚・卵・豆腐・納豆など、良質なたんぱく質が重要です。

②血糖値の急上昇を防ぐ

白米やパンなどの糖質は控えめにし、食物繊維を多く含む野菜・きのこ・海藻と一緒に摂ることで、脂肪の蓄積を防ぎます。

③過度な飲酒・間食に注意

特に内臓脂肪がつきやすい男性は、夜遅い食事や甘いお菓子・アルコールの量を見直すだけでも大きな違いが出ます。

極端に減らしたり、糖質を抜くという考え方より、食事内容の偏りをなくし、食事はよく噛んでゆっくり摂ることで食べすぎを防ぎ、代謝を落とさず、身体を整えることができます。 

続けられる運動を習慣に

男性更年期にはテストステロンの減少により筋肉が落ちやすくなるため、筋力を維持することが代謝を保ち、体重増加を防ぐ鍵になります。ムに通わずとも、すぐにでもできる運動習慣を持つことがお勧めです。

①ウォーキング・軽いジョギング

1日20~30分、無理のない範囲で歩くだけでも効果的です。朝の散歩はメンタルにもプラス。

②スクワット・かかと上げなどの簡単な筋トレ

太ももやふくらはぎなど、大きな筋肉を使う動きは、代謝アップに直結します。

③ストレッチやヨガもおすすめ

自律神経を整え、ホルモン分泌にもよい影響を与えます。

最初は、疲れを感じない程度から始め、毎日少しずつ増やしていくことが、継続につながります。

質の良い睡眠がホルモンバランスを整える

睡眠不足や不規則な生活は、テストステロンの分泌を妨げる大きな要因です。質の良い睡眠を確保することで、代謝の安定・メンタルの安定に繋がります。

  • 就寝・起床時間を一定にする
  • 寝る1時間前にはスマホ・PCの使用を控える
  • 寝る前の飲酒・カフェインを控える

睡眠には、疲労回復やストレスを軽減する効果がありますので、「回復の時間」として整えていきましょう。

趣味や楽しみを持つ

テストステロンの分泌は、食事・運動・睡眠を整えるとともに、心の安定やモチベーションなどにも影響します。趣味や楽しみを持ち、心のリフレッシュを忘れないことも大切です。

好きな映画や音楽を楽しむ、読書をする、いつもと違った道を通ってみるなど、ちょっとした心がけてリフレッシュすることができます。自分の時間を持つことから始めてみるのがいいかもしれません。

まとめ

体重の増加は、単なる加齢ではなく、男性更年期に差し掛かったサインかもしれません。

もし「最近、なんとなく調子が出ない」と感じているなら、それは体からのメッセージ。生活を少し整えるだけで、体も心も変わっていきます。

今日からできることから始めて、無理なく、自分らしいコンディションを取り戻していきましょう。

この記事の監修者

伊勢呂 哲也

医療法人インテグレス理事長
大宮エヴァグリーンクリニック 理事長・院長
東京泌尿器科クリニック上野/
池袋消化器内科・泌尿器科クリニック/
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長

泌尿器科・消化器科の専門領域で年間3万人の外来診察を行う。著書、テレビ出演歴多数。専門Youtubeチャンネルは20万人以上の登録者(2025年6月現在)
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