メラトニンは、睡眠と覚醒のリズムを調節する役割をもち、不眠に悩む方や男性更年期障害に関心のある方にとって、重要なホルモンです。本記事では、メラトニンの役割や効果、男性更年期障害との関係について詳しく解説します。
メラトニンとは?
体内時計を司るホルモン
メラトニンは、脳の松果体から分泌されるホルモンで、生体のサーカディアンリズム(体内時計)を調節する役割をもっています。主に夜間に分泌が増加し、眠気を誘発します。普段、夜に自然に眠くなってくるのはこのメラトニンが関係しているのです。メラトニンは、目に入る光の量によって分泌がコントロールされており、暗くなると分泌が増加し、明るくなると減少します。
なお、メラトニンの分泌量は加齢とともに減少します。これが高齢者の不眠の一因とされています(1)。
メラトニンの効果
メラトニンが分泌されると、自然な眠気を誘発し睡眠の質を向上させるとされています(2)。また、体内時計の乱れを整えるため時差ボケの症状を軽減します。
不眠症への対策
不眠症の原因は多岐にわたりますが、メラトニンの分泌不足も一因となり得ます。メラトニンを適切に補うことで、入眠困難や睡眠維持障害の改善が期待できます(3)。
メラトニンと男性更年期障害
男性更年期障害は主に40歳以降の男性に見られる症状で、テストステロンなどの性ホルモンの分泌低下により、疲労感、イライラ、不眠、性欲減退などが起こる病気で、この不眠の症状に対してメラトニンが有効となる可能性があります。
そこで、ここからはメラトニンの分泌を促すのに効果的な食べ物や方法をいくつか紹介します。
メラトニンを含む食べ物
メラトニンは食事から摂取することができます。
・タルトチェリー:睡眠の質を向上させ、体内のメラトニンを増やすとされた研究があります(4)。
※タルトチェリーとは、主に北米で栽培されている、強い酸味が特徴の「生で食べないチェリー」の総称です。
・米:(植物の中で)イネ科の植物はメラトニン含有量が高いと報告されています(5)。
生活習慣でメラトニン分泌を促す方法
光の管理
・夜間の照明:就寝前は部屋の照明を落とし、スマートフォンやパソコンなどのブルーライトを避けましょう。
・朝の太陽光:起床後すぐに太陽の光を浴びることで体内時計がリセットされます。
規則正しい生活
・就寝・起床時間の固定:毎日同じ時間に寝起きすることでメラトニンの分泌リズムが整います。
・適度な運動:日中の運動は夜間の睡眠を深くします。
・カフェインの制限:午後以降のカフェイン摂取は控えて、夜によりよく眠れるようにしましょう。
メラトニンはサプリメントで摂取できる?
ここまでで、メラトニンの分泌を促すのに効果的な食べ物や生活習慣を紹介してきました。しかし、もっとダイレクトにサプリメントなどでメラトニンを摂取したいと考える方がいらっしゃるかもしれません。そこでここからは「サプリメントや薬でメラトニンの分泌を促すことはできるのか」について解説します。
日本でのメラトニンの扱い
日本において、メラトニンは「医薬品成分」と位置付けられています。つまり、日本国内で製造販売するためには、医薬品として承認を受ける必要があり、原則として健康食品やサプリメントとして販売されることはないのです。そのため、ドラッグストアなどで「メラトニンサプリメント」を入手することはできないのが現状です。
メラトニン受容体アゴニスト薬の存在
日本における「メラトニンに準じた作用」をもたらす薬には、ラメルテオン(ロゼレム®)などのメラトニン受容体アゴニスト*があります。ただ、これらは処方箋薬のため、処方には医師の診察が必要となります。また、市販のサプリメントとは異なり、用法・用量、使用目的が医療的に管理されます。つまり、睡眠障害で受診し、医師が必要と判断した場合に限り、「メラトニンに準じた作用」をもたらす薬は処方されるのです。
*受容体アゴニストとは、体の中の特定のスイッチ(受容体)を押して、そのスイッチが本来持っている働きを起こさせる薬のこと。つまりこの場合メラトニンを出すスイッチを押すイメージのお薬。
まとめ
メラトニンは、睡眠の質を向上させるだけでなく、男性更年期障害の不眠症状の改善にも役立つ可能性があります。食べ物からの摂取や生活習慣の見直しにより、メラトニンの分泌を保ち、より良い睡眠を目指しましょう!
参考文献
この記事の監修者
伊勢呂 哲也
医療法人インテグレス理事長
大宮エヴァグリーンクリニック 理事長・院長
東京泌尿器科クリニック上野/
池袋消化器内科・泌尿器科クリニック/
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長
泌尿器科・消化器科の専門領域で年間3万人の外来診察を行う。著書、テレビ出演歴多数。専門Youtubeチャンネルは17万人以上の登録者(2024年12月現在)
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