最近、疲れやすくなった、イライラしやすい、ぐっすり眠れないと感じることはありませんか? それは、ホルモンバランスの乱れが原因かもしれません。
加齢やストレス、生活習慣の変化により、男性ホルモンの分泌が低下すると、心身にさまざまな影響が現れることがあります。本記事では、男性のホルモンバランスと体調不良の関係について解説し、予防・改善のための具体的な対策を紹介します。
体調不良の原因?ホルモンバランスとは
年齢とともに体の変化を感じることは珍しくありません。しかし、その原因がホルモンバランスの乱れにあることを認識している男性は少ないでしょう。
ホルモンは体のさまざまな機能を調整する重要な物質であり、そのバランスが崩れると心身に不調が生じることがあります。特に男性ホルモンであるテストステロンの減少は、疲労感や筋力低下、集中力の低下、睡眠障害などにつながることが知られています。
男性に関わるホルモンの役割
ホルモンは、私たちの体の機能を正常に保つために重要な役割を果たします。男性の場合、テストステロンをはじめとする以下のようなホルモンが筋力、精神状態、代謝、睡眠などに影響を与えています。
テストステロン
筋肉量の維持や活力、性欲などに関わるホルモンであり、加齢とともに分泌量が減少します。
コルチゾール
ストレスホルモンのひとつで、加齢に伴い分泌量が増える傾向(特に夜間)があります。適量であれば体のストレス耐性を高めますが、慢性的に増えすぎると免疫力の低下や疲労感の増大につながります。
メラトニン
睡眠ホルモンとして知られているホルモン。体内時計を調整し、深い眠りを促す役割を果たしますが、加齢や生活習慣の乱れによって分泌が低下することがあります。
男性ホルモンが乱れるとどうなる?
日常生活のちょっとした不調もホルモン量の変化やホルモンバランスの乱れが原因である可能性があります。
男性ホルモンの代表であるテストステロンが減少すると、筋力の低下、疲れやすさ、集中力の低下、イライラ、不眠などの症状が現れることがあります。
また、コルチゾールの過剰分泌は、ストレスを感じやすくなるだけでなく、内臓脂肪の蓄積を促進し、生活習慣病のリスクを高める要因にもなります。
メラトニンの分泌が減ると、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めやすくなったりして睡眠の質が低下し、日中の疲労感が増すことがあります。
特に40代以降の男性では、ホルモンバランスの変化が顕著になり、放置すると更年期障害に発展することもあります。体の不調を感じたら、ホルモンバランスの乱れを疑うことが大切です。
体調不良の原因として考えられる男性更年期
ホルモンバランスの乱れが進行すると、男性更年期と呼ばれる状態になることがあります。では、どのような症状が現れるのでしょうか?
疲れやすい、イライラする、眠れない…その症状
男性更年期では、日常生活に支障をきたす様々な症状が現れます。例えば、何をしても疲れが取れない、仕事に集中できない、急に怒りっぽくなる、夜ぐっすり眠れないといった問題が多く報告されています。
これらの症状は、ストレスや加齢に伴うホルモンの減少が関係していることが多く、単なる「年のせい」では片付けられません。自分の体調の変化を見極め、適切な対策を取ることが重要です。
男性更年期は予防できる?
男性更年期を完全に防ぐことは難しいですが、日々の習慣を見直すことでそのリスクを下げることはできます。
適度な運動、バランスの取れた食事、質の良い睡眠を心がけることで、ホルモンバランスを整える助けになります。また、ストレスをため込まないようにすることも重要です。もし症状がひどい場合は、医療機関でのホルモン補充療法を検討するのも一つの方法です。
ホルモンバランスの乱れを予防・改善する方法
ホルモンバランスの乱れによる体調不良を防ぐためには、日々の生活習慣が重要です。ここでは、予防と改善のための具体的な方法を紹介します。
生活習慣の見直し
ホルモンバランスを整えるためには、生活習慣の改善が不可欠です。
特に、適度な運動はテストステロンの分泌を促し、筋力や代謝の維持に役立ちます。食事面では、タンパク質や良質な脂質を含む食材を摂取し、栄養バランスを意識することが重要です。また、睡眠の質を向上させるために、寝る前のスマホ使用を控え、規則正しい生活を送ることも効果的です。
サプリメントや治療法
ホルモンバランスを補う手段として、サプリメントやホルモン補充療法があります。
亜鉛やビタミンDなどの栄養素はテストステロンの生成を助けるため、食事やサプリで補うことが推奨されることもあります。また、重度の男性更年期症状がある場合には、医師と相談のうえホルモン補充療法を受けることも選択肢の一つです。自己判断でのホルモン補充はリスクがあるため、必ず専門医の指導を受けることが重要です。
まとめ:ホルモンバランスを整えて、元気な毎日を取り戻すために
ホルモンバランスの乱れは、男性の体調不良の一因となることがありますが、適切な知識を持ち、日々の生活習慣を見直せば、症状を軽減し健康的な生活を送れます。
そのため、体調の変化を感じた際はホルモンバランスの影響を考慮し、早めに対策を講じるようにしましょう。
【参考文献】
日本泌尿器科学会, 日本メンズヘルス医学会, & LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き作成委員会. (2022). LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き. 医学図書出版. https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/44_loh.pdf
日本内分泌学会. (2024, December 10). 男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群). 日本内分泌学会. https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=71
この記事の監修者

伊勢呂 哲也
医療法人インテグレス理事長
大宮エヴァグリーンクリニック 理事長・院長
東京泌尿器科クリニック上野/
池袋消化器内科・泌尿器科クリニック/
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長
泌尿器科・消化器科の専門領域で年間3万人の外来診察を行う。著書、テレビ出演歴多数。専門Youtubeチャンネルは18万人以上の登録者(2025年1月現在)
伊勢呂哲也Youtubeチャンネル