男性更年期障害は、加齢などによってテストステロンが減少することで起こる症状の総称です。テストステロンは筋力や骨格の維持、性欲・精力、さらには精神的な安定にも深く関わるホルモンで、その減少は生活の質(QOL)に大きな影響を与える可能性があります[1]。
そこで本記事では、男性更年期障害の特に身体に現れやすい症状について詳しく解説します。また、症状が出現した際には早めに病院に受診して治療することが大切ですが、ここでは、病院受診前にできる対策や、内服治療以外での対策も簡単に紹介します。
疲労感・倦怠感と日中の眠気
男性更年期障害によってテストステロンが減少すると、筋肉量や基礎代謝が落ち、体力が衰えやすくなります。その結果、疲労感が抜けにくい状態に陥ります。また、夜間の睡眠の質が低下し、朝起きたときに十分な回復感が得られず、日中の眠気を強く感じるケースも少なくありません[1]。
症状
• 疲れやすい:運動や仕事のパフォーマンスが低下する
• 眠気:昼間の集中力や作業効率が下がり、生産性も低下する
日常生活での対策のポイント
・軽い運動(ウォーキングなど)で筋力の維持を図る
・就寝前のスマホ使用を控え、睡眠環境を整える
・疲労が続く場合は医師に相談し、テストステロン値の検査を検討する[2]
筋力の低下と体力の衰え
テストステロンは、筋肉の合成や修復の促進に不可欠なホルモンです。そのため、テストステロンの減少が進むと、筋肉量や筋力が徐々に低下し、持久力の衰えが顕著になります[3]。日常生活上での問題が出てきたら対策が必要かもしれません。
症状
• 階段の上り下りで息が切れやすい
• 筋肉痛が治りづらく、疲れが溜まりやすい
日常生活での対策のポイント
レジスタンス運動:軽いダンベルやスクワットなどで筋肉を刺激する
タンパク質摂取:魚・肉・大豆製品をバランス良く食べる
無理のない範囲で運動を継続:急激な運動ではなく、適度な運動を続ける
めまいや立ちくらみ
男性更年期障害が進むと、自律神経のバランスが崩れやすくなり、めまいや立ちくらみが起こることがあります。これには血流の低下や血圧の不安定などが関係していると考えられます[3]。
症状
立ち上がった際にふらつく
乗り物酔いしやすくなる
日常生活での対策のポイント
水分・塩分の適切な補給:脱水や低血圧を防ぐ
急に立ち上がらず、ゆっくり動作を行う
ストレス管理:ストレスは自律神経の乱れを増幅させる可能性あり
性欲・精力の低下と勃起障害
テストステロンは性機能を維持するうえで不可欠なホルモンです。そのため、テストステロンが減少すると性欲(精力)の低下をはじめ、勃起障害(ED)が生じやすくなります[5]。また、若い頃は当たり前にあった朝立ちが見られなくなるのも、男性更年期の代表的な身体症状です[3]。
症状
• 性欲がわかず、性交渉の回数が激減する
• 勃起の維持が難しく、満足な硬さを保てない
• 朝立ちが減る、あるいはまったく起こらない
日常生活での対策のポイント
泌尿器科の受診:性機能低下やEDについて相談する
生活習慣の改善:飲酒や喫煙を控え、適切な睡眠を確保する
ホルモン補充療法の検討:医師と相談しながら安全に行う
これらの症状については、病院外での対策も重要ですが、泌尿器科等を受診して早期に男性更年期障害、あるいはそのほかの疾患についてしっかり調べていくことがとても大切です。
早めの気づきと受診が大切
男性更年期障害による身体症状(疲れやすい・眠気、筋力低下、めまい、性欲や精力の減退、勃起障害、朝立ちの減少など)は、日常生活に大きな影響を及ぼします。放置すると、精神的なストレスや家族関係のトラブルにつながる可能性もあります。気になる症状がある場合は早めに専門医に相談し、適切な検査と対策を取ることが重要です。
まとめ
男性更年期障害は、加齢に伴うテストステロンの減少が主な原因です。疲労感・眠気、筋力低下、めまい、性欲や精力の減退、勃起障害、朝立ちの減少など、日常生活に深刻な影響を及ぼす症状が多数あり、これらを放置すると、精神面や家族・職場との関係にまで悪影響が広がる恐れがあります。
早めの受診と生活習慣の見直しで、症状の改善や進行の抑制が期待できるため、必要に応じて専門医と相談し、テストステロン値の測定やホルモン補充療法を検討することが大切です。
男性更年期障害は、誰にでも起こり得る身体の変化です。年齢のせいだと安易に考えず、少しでも「変だな」と思ったら気軽に医師へ相談することが、健やかな日々を維持する近道といえるでしょう。
参考文献
1. Shehzad Basaria. Male hypogonadism. Lancet. 2014 Apr 5;383(9924):1250-63. doi: 10.1016/S0140-6736(13)61126-5.
2. Rachel Leproult. et al, Effect of 1 week of sleep restriction on testosterone levels in young healthy men JAMA. 2011 Jun 1;305(21):2173-4. doi: 10.1001/jama.2011.710.
3. 日本泌尿器科学会ほか編.LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き.
医学図書出版,2022,11p,40-42p.
この記事の監修者

伊勢呂 哲也
医療法人インテグレス理事長
大宮エヴァグリーンクリニック 理事長・院長
東京泌尿器科クリニック上野/
池袋消化器内科・泌尿器科クリニック/
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長
泌尿器科・消化器科の専門領域で年間3万人の外来診察を行う。著書、テレビ出演歴多数。専門Youtubeチャンネルは18万人以上の登録者(2025年1月現在)
伊勢呂哲也Youtubeチャンネル