寝ていたら汗びっしょりになって起きてしまう。でも、夜中に冷たいシャツを着替えるのは億劫でそのままにしてしまい、結果ぐっすり眠れない。
また、ベットに入っても目が冴えてなかなか寝付けなかったり、夜が明ける前に目が覚めてしまったり…。
中高年の男性のなかでこのような症状より、深い睡眠が取れず朝起きた時に寝不足感が残ることで、疲れが抜けないという症状に悩んでる方も多いのではないでしょうか。
このような睡眠に関する身体的症状は、もしかしたら男性更年期障害が原因かもしれません。
男性更年期障害とは
男性更年期障害は、テストステロン(男性ホルモン)の分泌が低下することで表れるさまざまな症状のことです。40代後半から50代前半で発症することが多く、発汗、睡眠障害、ほてり、うつ状態、性欲低下など、女性の更年期障害でもよく見られる症状が現れます。
男性にも更年期障害があることが、日本で認識されるようになってすでに25年以上以上が経っています。しかし、その認知が進まないために、昨今、大きな社会問題になりつつあります。
寝汗とテストステロンの関係性
テストステロンの量が減ると、更年期障害に見られるひどい寝汗を誘発することがあります。その理由として、以下のことが挙げられます。
筋肉量の低下
テストステロンは、体の温度調節機能を司る筋肉量の維持とも深い関係があり、分泌量が減少すると筋肉量が低下することが分かっています。
筋肉は、体の末端の血液を心臓に戻すポンプの役割を果たすと同時に、それにより血流が良くなることで体温調整をする力が高まり、熱を体外に逃がしやすくする作用があります。しかし、筋肉量が減少すると、ポンプ機能も低下し、血流も低下します。結果として、熱は体内に留まってしまい寝汗をかく可能性が高まります。
自律神経の乱れ
体温調整を行う機関として自律神経がありますが、これは体を活発に動かすための交感神経と、休むためにはたらく副交感神経から成り立っています。
テストステロンの低下によりホルモンバランスが崩れることで、この自律神経が乱れると体温調整がうまくいかず寝汗の原因になることがあります。
テストステロンと不眠症状の関係性
不眠症状もまた、男性更年期障害の代表的な症状のひとつです。
不眠自体は更年期障害に関わらず、生活習慣や自律神経の乱れ、カフェイン摂取などによって誰でもなり得るものであり、厚生労働省の調査によると日本人の成人の20.2%が慢性的な不眠を抱えているという結果もあるほどです。*1
一般的に不眠の症状は、下記の4つに分類されます。これらにより日中に強い眠気を感じ体がだるく、頭がぼーっとした感じがする症状も不眠のつらいところです。
入眠障害
寝床に入ってから30分〜1時間以上経過しても寝付けない日が、頻繁に起こっている状態。
中途覚醒
一度は寝られていても深夜に何度も目が覚めてしまう症状。一晩に一度目覚めることもあれば複数回目覚めることもあり、一度目が覚めてしまうとその後なかなか寝付けない状態。
早朝覚醒
本来の起床時間よりも、例えば2時間以上早く目が覚め、一度目が覚めてしまうとその後なかなか寝付けない状態。
熟眠障害
寝付きは悪くなく問題なく寝入ることでき、途中覚醒も発生せず、睡眠時間は十分に取れているのに熟睡感が得られない状態。
前述のように不眠症状が起きる原因のひとつに、自律神経の乱れが関係しています。自律神経は、活動的な状態を促進する交感神経と、リラックスや休息を促進する副交感神経の2つからなります。
通常、私たちが寝るときには、副交感神経が優位となります。しかし、自律神経が乱れることで副交感神経が正常に働かず、睡眠を取るべき時間に脳が興奮した状態となり不眠症状が発生してしまうのです。
そして、この自律神経の乱れは、ストレスや生活習慣の乱れのほか、ホルモンバランスの変化、つまりテストステロンの減少などによっても引き起こされるため、男性更年期障害の代表的な症状となっているわけです。
男性更年期の寝汗や不眠は、テストステロンの減少が原因
上記のように、男性ホルモンであるテストステロンの減少が筋肉や自律神経などに影響を与えることで、寝汗や不眠といった身体症状が現れることが分かったかと思います。
本稿では触れていませんが、それ以外にも男性更年期障害では、意欲低下やイライラ誘発などの精神症状も現れます。それらについては、また別の記事でご紹介したいと思います。
テストステロンの減少、つまり男性更年期障害については、医療機関で診察することもできます。もし、寝汗や不眠が気になる場合は、医療機関を受診し適切な診断と治療を受けることをお勧めします。
*1:厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000351576.pdf