男性更年期障害の4つの治療方法

男性にも更年期障害が存在し、年齢を重ねることで体や心にさまざまな不調が現れます。これを「男性更年期障害」と呼び、主に40代から50代にかけて、男性ホルモンの一つであるテストステロンの減少が原因で起こります。
そのため、患者さんの多くは50~60歳代です。男性更年期障害では、身体的な変化だけでなく、精神的症状を生じ、日常生活に支障をきたすことがあります。しかし、適切な治療を受けることで、症状が和らぎ、生活の質を向上させることができます。本記事では、現在行われている男性更年期障害の治療法について解説します。

1. 男性ホルモン補充療法(テストステロン補充療法)

男性更年期障害の治療法として最も一般的で、効果的とされているのは、男性ホルモン(テストステロン)の補充療法です。特に、男性ホルモン値が低く、症状が重い場合に良い適応となります。

加齢によりテストステロンが減少すると、疲労感や筋力の低下、性欲の減退、抑うつなどの症状が現れます。そのため、この治療では血中テストステロン濃度を正常に保つために、テストステロンを注射したり、軟膏などの形で補充したりします。
具体的には2〜4週間に1回の頻度でテストステロン補充療法(注射もしくは軟膏の塗布)を行います。このテストステロン補充療法を行うことで、生活意欲の向上や、性的機能の回復、筋肉量の増加をもたらし、男性更年期障害の症状を改善することが期待できます。

2. 生活習慣の改善(生活療法)

男性更年期障害の治療には、生活習慣の改善が欠かせません。例えば、食事や運動、睡眠の質を改善するだけで、症状が改善することがあります。

まずは、バランスの取れた食事を心がけ、特にビタミンD、亜鉛、マグネシウムを多く含む食材を摂取するとよいでしょう。これらの栄養素は、テストステロンの合成を助け、ホルモンバランスを整える役割を果たします。

また、運動も重要です。筋力トレーニングや有酸素運動は、筋力の維持に繋がります。さらに、ストレスを軽減するためのリラクゼーション法を行ったり、趣味をもったりすることも有効でしょう。

3. 漢方薬

男性更年期障害の治療法として、漢方薬も注目されています。漢方は、体全体のバランスを整えることを目的としており、ホルモン療法などと併用することも可能です。

特に、精神的な症状が強い場合に、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)などが処方されることがあります。この漢方薬は、イライラや不安感、焦燥感を軽減し、精神的な安定をもたらします。
また、体力の回復を助けるために、六君子湯(りっくんしとう)などが使われることもあります。この漢方薬には、身体的な消耗感を軽減し、日常生活を送りやすくなる効果があります。

4. 心理療法とカウンセリング

男性更年期障害は、身体的な症状だけでなく、精神的な影響も大きいことが特徴です。実際に、男性更年期障害外来を受診する患者さんの半数以上にうつ病を認めるという報告があるほどです。
特に、抑うつや不安感、ストレスが症状を悪化させることが多いため、心理療法やカウンセリングが重要な役割を果たします。認知行動療法(CBT)は、ストレスや不安を軽減し、思考パターンを改善する方法として有効です。

また、カウンセリングを受けることで、症状に対する理解を深め、心のケアを行うことができます。特に、家族やパートナーとの関係に悩んでいる場合には、カップルカウンセリングを受けることで、より良いコミュニケーションと関係性の改善が図れます。

なお、症状の程度によっては抗うつ薬や抗不安薬などを併用することもあります。

そのほかの治療

男性更年期障害の治療には、その他にも補助的な方法があります。
例えば、食事でビタミンDや亜鉛、マグネシウムなど、テストステロン値上昇に有効な栄養素を確保するのが難しい場合には、サプリメントを取り入れることで、テストステロンの合成を促すことができます。

また、男性更年期障害によるストレス管理のために、瞑想や深呼吸法、ヨガなどのリラクゼーション法が有効なこともあります。

まとめ

男性更年期障害の治療は、テストステロン補充療法を中心に、生活習慣の改善や漢方薬、心理療法などを組み合わせると効果的です。
自分に合った治療法を選ぶためには、専門の医師と相談し、総合的にアプローチすることが重要です。また、生活習慣を見直し、心身のバランスを整えることが、長期的な改善に繋がるでしょう。

参考文献

  1. 一般社団法人日本内分泌学会.”男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)”.一般の皆様へ.2024年12月10日,
    https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=71(参照2025-1-10)
  2. 筑波大学腎泌尿器外科診療グループ.”男性機能障害”.筑波大学腎泌尿器外科診療グループ
    https://www.tsukuba-urology.com/patient/disease/male/(参照2025-1-10)
  3. A S Prasad et al.Zinc status and serum testosterone levels of healthy adults.Nutrition.1996
  4. Giacomo Tirabassi et al.Vitamin D and Male Sexual Function: A Transversal and Longitudinal Study.Int J Endocrinol.2018
  5. L.R. BRILLA et al/Effects of a Novel Zinc-Magnesium Formulation on Hormones and Strength.JEP.2000

この記事の監修者

伊勢呂 哲也

医療法人インテグレス理事長
大宮エヴァグリーンクリニック 理事長・院長
東京泌尿器科クリニック上野/
池袋消化器内科・泌尿器科クリニック/
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長

泌尿器科・消化器科の専門領域で年間3万人の外来診察を行う。著書、テレビ出演歴多数。専門Youtubeチャンネルは18万人以上の登録者(2025年1月現在)
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