「気づけばスマホを眺めている」
「会議中、言葉が耳をすり抜ける」
「以前のような“ゾーン状態”に入れない」
40〜50 代になると、こうした違和感を抱く人がぐっと増えます。
けれど集中力の低下は、単なる加齢現象ではありません。睡眠・仕事環境・栄養・メンタル――いくつもの歯車がずれて起こるものです。
「最近、頭がぼんやりする…」といったような違和感を、見逃さないでください。
少しの工夫と仕事術で歯車をかみ合わせれば、集中力は十分に取り戻せます。
ここでは“今日から試せる 7 つのアプローチ”を、最新エビデンスを交えてご紹介します。
集中力が落ちる 3 つの主要因
まずは、集中力が落ちてしまう要因をきちんと把握しましょう。
1.睡眠の質が下がっている
浅い眠りや途中覚醒が続くと、脳は日中でも低出力モード。厚労省の睡眠ガイド(2023)でも「起床後の眠気」が集中力低下の主要サインとされています。
2.情報過多と“ながら作業”
メール・チャット・通知…脳は複数の入力を同時処理できません。ヘビーマルチタスク派は注意コントロールが低いとする研究もあります。
3.メンタル負荷と疲労の蓄積
責任の重さに比例し、無自覚のストレスは増えがち。加齢とともに持続注意はじわりと低下するというメタ解析報告も。
今すぐにでもできる集中力を取り戻す仕事術
1.仕事に「時間の枠」をつくる
ポモドーロ・テクニックを活用
「25分集中+5分休憩」もしくは「「50分集中+10分休憩」というサイクルを活用してみましょう。
これは、ポモドーロ・テクニックと呼ばれる手法です。
大学生主体の実験では、25〜30 分+5 分休憩型が主観的疲労を最も抑えたのですが、50分で実施された時との差が小さいため、自身のリズムで 25 分または 50 分枠を試す方法が推奨されています。
例えば、「あと25 分だけ」と区切ることで脳はゴールを意識しやすく、休憩のリフレッシュもできます。
2.「朝イチ時間」は最重要タスクに
40〜50 代は、午後より午前中の方が脳の回転が高い傾向があると言われています。
- 朝はメールより“考える仕事”を
- 会議は午後に集約し、午前は自分の集中ゾーンに
3.デジタルの「通知」を制する者が集中を制す
スマホが机上に“あるだけ”で注意課題の成績が低下するという報告があります。
- 作業中は通知オフ/機内モード
- チャット確認は 1 日 3 回などルール化
- スマホはバッグや引き出しへ
4.視覚的な“ノイズ”を減らす
散らかったデスク=散らかった頭、と考えましょう。
- 机には「今やるもの」以外置かない
- ブラウザタブは必要最小限
- TODO は 1 画面に
5.食後の「集中力の落ち込み」に備える
ランチで高GI食(白米などの糖質中心の食事)ばかり食べると、その 1 時間後に集中力が下がりやすいと実験で確かめられています。
- 昼は「たんぱく質+野菜+ご飯」で血糖をなだらかに
- 食後に 5 分歩くだけで眠気が軽減
- たんぱく質も大切。たんぱく質を多く食べる人ほど記憶力と集中力が良かったという海外の調査も
6.“集中が切れたら戻れる儀式”を決める
- 休憩前に付箋で「次やる一手」を書き残す
- タイマー 5 分で“再着席コール”
- タスク 1 つ達成→小休憩 のループで、小さな達成感を積み重ねる
7.週に 1 度、“余白の時間”を入れる
脳は「ぼーっとした時間」に情報を整理・統合します。予定を詰めすぎず、誰とも会わない日・スマホを持たない時間をあえて確保。散歩や読書で思考の棚卸しを。
まとめ──集中力は「整える工夫」で取り戻せる
年齢とともに脳と体のチューニングは変化します。
- 時間を区切り、休む勇気を持つ
- 通知とマルチタスクを減らす
- 食事と睡眠を微調整する
今日から始める小さなてこ入れで、ふたたび“ゾーン”に入りやすい自分へ。
どうか、「もう歳だから」とあきらめず、あなたに合った集中のリズム を取り戻してください。
参考文献
- 厚生労働省健康局. 健康づくりのための睡眠ガイド 2023 [Internet]. 東京: 厚生労働省; 2023 [cited 2025-05-26]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf
- 厚生労働省健康局. 健康づくりのための睡眠指針 2014 ― 睡眠 12 箇条 [Internet]. 東京: 厚生労働省; 2014 [cited 2025-05-26]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/content/001208251.pdf
- Pillay S. Your brain can only take so much focus. Harvard Business Review. 2017 May 12 [cited 2025-05-26]. Available from: https://hbr.org/2017/05/your-brain-can-only-take-so-much-focus
- Biwer F, Wiradhany W, Oude Egbrink MGA, de Bruin ABH. Understanding effort regulation: comparing “Pomodoro” breaks and self-regulated breaks. Br J Educ Psychol. 2023;93(S2):353-367. doi:10.1111/bjep.12593
- Skowronek J, Seifert A, Lindberg S. The mere presence of a smartphone reduces basal attentional performance. Sci Rep. 2023;13:9363. doi:10.1038/s41598-023-36256-4
- Ophir E, Nass C, Wagner AD. Cognitive control in media multitaskers. Proc Natl Acad Sci USA. 2009;106(37):15583-15587. doi:10.1073/pnas.0903620106
- Marchand OM, Kendall FE, Rapsey CM, et al. The effect of postprandial glycaemia on cognitive function: a randomised crossover trial. Br J Nutr. 2020;123(12):1357-1364. doi:10.1017/S0007114520000458
- Coelho-Júnior HJ, Calvani R, Landi F, Picca A, Marzetti E. Protein intake and cognitive function in older adults: a systematic review and meta-analysis. Nutrients. 2021;13(6):1921. doi:10.3390/nu13061921
- Lee H, Hernandez K. Age differences in sustained attention: a meta-analysis. Psychol Aging. 2021;36(8):928-946. doi:10.1037/pag0000679
- Baumeister RF, Tierney J. Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength. New York: Penguin Press; 2011. ISBN: 978-0143122234