女性の更年期障害は広く知られていますが、男性にも更年期があることをご存知でしょうか? 疲労感やイライラ、性欲の低下など、心身の不調を感じている男性は少なくありません。
しかし、いざ病院やクリニックを受診しようとしたときに「一体、何科を受診すればよいのか?」と迷う方も多いかと思います。本記事では、主に男性更年期障害(加齢男性性腺機能低下症候群・LOH症候群)で病院にかかる際の疑問と、その解決策を解説します。
男性更年期障害とは?
テストステロンの低下が原因
男性更年期障害は、加齢やストレスなどによって男性ホルモンの1つであるテストステロンの分泌が低下することで起こります。テストステロンが低下する要因には以下のようなものがあります。
・加齢:テストステロン値は30歳頃から徐々に低下する
・ストレス:慢性的なストレスはホルモンバランスを乱す原因となる
・生活習慣:不規則な生活や不健康な食事などが影響する
主な症状
男性更年期障害の症状は多岐にわたり、例えば以下のようなものがあります。
・身体的症状:性機能障害(性欲減退や勃起不全など)、疲労感、筋力低下、発汗、ほてり、睡眠障害
・精神的症状:イライラ、不安感、抑うつ、集中力の低下
疲労感、睡眠障害、イライラなど、他の病気でも起こりそうな症状から、性欲減退など、「年齢のせいじゃないの?」と考えられがちなものまであり、何とも曖昧な症状ですよね。これらの症状は他の疾患でも見られることから、「病気」だとは思われないこともよくあります。そのため、「気のせい」「年齢のせい」などと思い込み、自覚しにくい場合も……。
男性更年期障害はきちんと治療すれば、症状の改善が見込めるため、上記のような症状が長く続く場合には専門的な診断が重要となります。
何科を受診すればよいのか?
では、これらの症状を感じたとき、一体、どの科を受診すればよいのでしょうか? 男性更年期障害の症状は身体的なものから精神的なものまで幅広いため、自分で適切な診療科を選ぶのは難しいかもしれません。ここでは、受診を検討すべき科について解説します。
泌尿器科
泌尿器科は、男性生殖器や泌尿器系の疾患を専門としています。医師はテストステロンの分泌低下や性機能障害に詳しく、男性更年期障害の診断・治療を行っているのが最も多い科と言えるでしょう。メリットとして、医師が男性特有の症状に精通しており相談しやすいことや、詳細なホルモン検査や治療が可能なことが挙げられます。
一方で、すべての泌尿器科が男性更年期障害に対応しているわけではないため、事前に調べたり、対応してもらえない場合には他の医療機関を受診したりする必要があります。
内分泌内科
内分泌内科は、ホルモンバランスの異常に関する疾患を専門としています。テストステロン以外のホルモンも総合的に評価できるため、ホルモンバランスの異常について詳細な診断ができます。特に疲労や倦怠感、発汗などは、テストステロン以外のホルモン(甲状腺ホルモン・副腎ホルモン)などが原因の可能性もあり、それらを詳しく調べられるのがメリットです。
一方で、男性更年期障害が専門の医師があまりいないことや、内分泌内科の医師の数が少ないことがデメリットに挙げられます。
心療内科・精神科
男性更年期障害は抑うつや集中力の低下といった精神的な症状で発症することもあり、これらの症状が強い場合は心療内科や精神科の受診も選択肢に入れましょう。心療内科や精神科のメリットの1つは、必要に応じて専門的なカウンセリングや薬物療法を受けられることです。また、抑うつや集中力の低下には、前述のようなホルモンバランスの異常が関係していることがありますが、心療内科や精神科ではこの点を考慮して検査してもらえることがあることも利点です。
だたし、男性更年期障害を専門にしている医師はほとんどいないため、抑うつや集中力の低下の原因が男性更年期障害かを調べるのが難しいこともあり、その場合は他の医療機関の受診を検討する必要があるかもしれません。
総合診療科
症状が多岐にわたり、どの科を受診するか迷う場合には、総合診療科での相談も有効です。近年、適切に男性更年期障害を診断・治療できる総合診療科が増えており、そういった医療機関の受診を検討してみてもよいかもしれません。受診の際は「男性更年期障害が気になる」と言ってみるのも手だと思います。
専門の病院はあるのか?
男性更年期障害専門外来
最近では、男性更年期障害に特化した専門外来を設けている医療機関が増えてきているものの、まだまだ数が少ないのが現状です。また、こういった医療機関は都市部に集中しており、アクセスが難しい場合も多いです。インターネットで「男性更年期障害 東京」などと調べると、それぞれの地域で対応可能な病院が出てくるため、近隣にある場合は受診を検討するとよいでしょう。
まとめ
男性更年期障害の認知度はまだ低いものの、適切な診断と治療で症状の改善が期待できます。まずは近くの泌尿器科や内分泌内科を受診するなど、自分に合った医療機関を選びましょう。また、生活習慣の見直しやストレス管理も重要です。早めの対応で、健やかな日常を取り戻しましょう。
この記事の監修者
伊勢呂 哲也
医療法人インテグレス理事長
大宮エヴァグリーンクリニック 理事長・院長
東京泌尿器科クリニック上野/
池袋消化器内科・泌尿器科クリニック/
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長
泌尿器科・消化器科の専門領域で年間3万人の外来診察を行う。著書、テレビ出演歴多数。専門Youtubeチャンネルは15万人以上の登録者(2024年10月現在)
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