テストステロンとは?
テストステロンは人間にとって重要な性ホルモンの一種で、筋肉などの肉体形成や闘争心などの思考傾向、性機能・生殖機能の向上など、いわゆる「男性らしさ」を構成する働きを持っており、男性ホルモンの代表として扱われています。
男性の場合はそのほとんどが睾丸(精巣)で生成されますが、実は女性でも卵巣などで産出されています。しかし、その量は圧倒的に男性の方が多く、女性の生成量はごく僅かです。
テストステロンが体に及ぼす影響とは?
実際にテストステロンがどのように体に影響するのか、身体的・心理的・性機能的側面からみていきましょう。
身体的側面
筋肉や骨格の成長と維持に影響を及ぼすテストステロンは、20歳前後で分泌量が最も高くなり、男性をより男性らしい体つきへと変化させます。そして、加齢とともに徐々にテストステロン分泌量が減っていくため、何もしないと中年男性の筋肉量が減っていくのはこのためだと考えられています。
心理的側面
テストステロンレベルが高い人は自己評価が高く、リスクを取ることに対する恐怖が少ない傾向があると言われており、競争心や自身を高める影響をもつ可能性が示唆されています。また、報酬に対する欲求やモチベーションを高める役割も果たしていると言われており、ビジネスパーソンとして健全なメンタルを保つ上では重要なホルモンであると言えます。
性機能的側面
性機能の維持や向上に影響すると言われており、健全な性欲や勃起力を維持することで男性が男性たる魅力を高める作用があります。テストステロンが減少することで、性欲の減退や勃起障害などの男性としての性的機能の低下に繋がりやすいと言われています。
これらの要因から社会的責任が増大する傾向にある働き盛りの更年期男性にとって、テストステロンは重要なホルモンであると言えます。
テストステロンが不足するとどうなるの?
テストステロンの値が低下すると肉体的、精神的にも様々な影響が生じると言われていますが、具体的にどのような症状が現れるのでしょうか。
- 筋肉量の減少や筋力の低下
- 骨密度低下に伴う骨折リスクの上昇
- うつ症状や不安感、倦怠感の増加
- 理由もなくイライラする
- 集中力の低下
- 性欲の低下
- 早朝勃起回数の低下などの勃起障害
- 性交時の満足度の低下
これらの症状は、持続的なテストステロンの低下がある場合に特に顕著になる可能性があります。
テストステロンはなぜ減少するの?
テストステロンの減少には、さまざまな原因がありますがその具体例を説明します。
加齢による減少
テストステロンは、20歳をピークに加齢とともに緩やかに分泌量が減っていきます。これは、テストステロンを生成する精巣のライディッヒ細胞数の減少や活性力の低下などにより引き起こされます。
生活習慣による減少
運動不足は、身体活動の低下や脂肪組織の増加を引き起こし、テストステロンの生成に影響を及ぼします。
特に食べ過ぎや運動不足からくる肥満は、エストロゲン(男性にも存在する女性ホルモンの一種)の過剰な生成を促すことで、脳下垂体がさまざまなホルモンの働きをコントロールする性腺刺激ホルモン(LH)の分泌を減少させ、結果としてテストステロンの減少を引き起こします。
また、睡眠不足や睡眠障害もホルモンバランスを乱すことで、偏った食生活はホルモン合成に必要な栄養素の不足を引き起こすことで、それぞれテストステロン減少の起因となる可能性があります。
ストレスによる減少
長期間のストレスもまた、脳下垂体からの性腺刺激ホルモン(LH)分泌を減少させることが知られており、これにより精巣への刺激が減少。テストステロン生成の低下につながります。
例えば、ビジネスパーソンの場合、転勤や異動、昇進降格など外部環境の変化による過度のストレスでテストステロンの分泌に影響を与えると言われています。
慢性疾患や炎症性疾患による減少
糖尿病、慢性腎臓病、関節リウマチなどの疾患も体内のホルモンバランスを乱し、テストステロンの生成を妨げることがあります。
薬剤による減少一部の薬剤(例:抗精神病薬、抗てんかん薬など)は、脳下垂体からの性腺刺激ホルモン(LH) 分泌を抑制したり、精巣のライディッヒ細胞の機能を低下させたりすることにより、テストステロンの減少を引き起こす可能性があると言われています。
テストステロンの分泌を増やすには?
さまざまな要因で減少するテストステロンですが、増やす方法もあります。
いくつかの方法がありますが、必要に応じて、それぞれを組み合わせていくことが効果的です。
充分な栄養素の摂取
亜鉛、マグネシウム、ビタミンDなどの栄養素は、テストステロンの生成に不可欠です。これらの栄養素を含むバランスの取れた食事を摂取することを心掛けましょう。
栄養素については、この記事の最後に詳しく説明をしています。そちらもぜひ確認してみてください。
生活習慣の改善食生活や睡眠、運動等の生活習慣は、テストステロンの分泌に影響を及ぼします。従って、栄養バランスのとれた食事や十分な睡眠、適度な運動を心がけることが、テストステロンの分泌促進に必要となります。
ストレスコントロール
過度なストレスは、テストステロンの分泌を妨げることがあります。軽減するには、メディテーション、ヨガなどの適度な運動、入浴、睡眠、誰かと話をするなどさまざまな方法ありますが、自分に合ったものを見つけるようにしましょう。
サプリメントや漢方
サプリメントや漢方薬等の自然療法的なアプローチも、テストステロンの分泌をサポートする場合があります。
亜鉛、マグネシウム、ビタミンDなどテストステロンの生成に必要不可欠な栄養素を食事だけで補うのが難しい場合に、サプリメントを活用してみるのも有効な手段になりえます。
ただし、亜鉛の長期的な過剰摂取は免疫の低下を招くなどの弊害を招く恐れもあるので、摂取には充分に気を付ける必要があります。
漢方は、例えば、ホルモンバランスの乱れを整えるために使用するなど、内側から整えるための手段として使うことが出来ます。
疾患に対する適切な医療処置
特定の疾患や症状がテストステロンの低下を引き起こしている場合、その原因を治療することも有効です。
例えば、糖尿病や甲状腺疾患などの病気は、テストステロンの低下の原因となることが知られています。
ホルモン補充療法
テストステロン補充療法(TRT)は、男性更年期障害における治療として現在多くの病院やクリニックで行われている主流な医療処置の一つとなっています。
一方で、外部から接種することによる副作用も生じることから医師の監督の下で適切な治療を受けることが重要です。
テストステロンを増やすために有効な食べ物とは?
テストステロンの分泌に寄与する栄養素としては、亜鉛、ビタミンD、マグネシウム、飽和脂肪酸、タンパク質等がありますが、それぞれどのような食品が該当するのか紹介します。
- 亜鉛:牡蠣、赤身の肉、豆類、ナッツ類、種子類
- ビタミンD:魚(サーモン、マグロ)、卵黄、キノコ類
- マグネシウム:豆類、種子類、ナッツ類、緑黄色野菜
- 飽和脂肪酸:卵、牛乳製品、肉類、チーズ
- たんぱく質:鶏肉、豆腐、魚、豆類、乳製品
男性更年期とは切っても切れない関係にあるテストステロン。加齢による減少は自然の流れなので抗うことは出来ませんが、適切な対処で必要以上に減らさずに増やしていく方法があることをお伝えしました。
全てを実践するのは難しいかもしれませんが、無理のない範囲で、出来るものから取り入れてみるのはいかがでしょうか。
この記事の監修者
伊勢呂 哲也
医療法人インテグレス理事長
大宮エヴァグリーンクリニック 理事長・院長
東京泌尿器科クリニック上野/
池袋消化器内科・泌尿器科クリニック/
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長
泌尿器科・消化器科の専門領域で年間3万人の外来診察を行う。著書、テレビ出演歴多数。専門Youtubeチャンネルは15万人以上の登録者(2024年10月現在)
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