「最近、妻と話すのがしんどい…」その変化、男性更年期が関係しているかも

40代から50代に差し掛かると、多くの男性が原因不明の体調不良や精神的な不調を感じることがあります。疲れが取れない、イライラしやすい、集中力が続かないなどの症状は、単なる「年齢のせい」ではなく、男性更年期によるホルモンバランスの変化が影響している可能性があります。

厚生労働省の調査によると40代・50代の男女の約3割が更年期症状を経験しており、そのうち約1割の男性は、日常生活に支障をきたすレベルの不調を抱えているという報告があります。それにもかかわらず、約8割以上が医療機関を受診していないのが現状です。

この変化は本人だけでなく、パートナーとの関係にも影響を及ぼします。男性更年期の影響により夫婦間のコミュニケーションが上手く行かず、夫婦関係にひずみが生じるというケースが増えています。近年、増加傾向にある熟年離婚は2022年には23.5%と過去最高を記録し4組に1組が熟年離婚する時代です。

こうした背景を踏まえ、男性更年期と夫婦関係の関わりについて深掘りし、良好なコミュニケーションを保つための具体的な方法を紹介します。

体調不良が夫婦関係に与える影響とは?

疲れやストレスがもたらすコミュニケーションの亀裂

男性更年期における体調不良の代表的な症状には、慢性的な疲労感、睡眠の質の低下、集中力の低下、そして精神的な不安定さがあります。働き方改革により、ワーク・ライフの重要性が見直されていますが、まだまだ、長時間労働から解放されない人も少なくありません。

40-50代の男性の多くは、キャリアの最盛期にあり、オーバーワークが日常という人も少なくないでしょう。しかし、長時間労働は、家庭での時間やパートナーとのコミュニケーション時間を減少させるだけでなく、家族のために頑張るあまり、自分を追い込み、心身ともに疲れ切るという悪循環を生み出す生み出しますため改善が必要です。

疲労が蓄積すると、帰宅後は「何もしたくない」と感じ、家族との会話を避けがちになります。休みの日もゴロゴロ過ごすことが増え、結果的に家庭内での孤立感を深めることにつながります。この孤立感は、さらにストレスを増幅させ、男性更年期を加速させる原因となるのです。

精神的な不調とパートナーシップのバランス

男性更年期の精神的な不調は、パートナーシップにも深刻な影響を与えます。

この背景には、男性ホルモンであるテストステロンの低下が深く関わっています。テストステロンは、身体の活力だけでなく、精神的な安定や対人関係における積極性を支える役割も担っています。しかし、加齢やストレスによりホルモンバランスが崩れると、意欲や集中力が低下し、気分が落ち込みやすくなる傾向があります。この状態では、些細なことに対して過敏になったり、逆に関心を失ったりすることが増え、パートナーとのコミュニケーションを負担に感じて避けてしまうことが少なくありません。

さらに、コミュニケーションが低下することで、家庭内での孤独感や寂しさが増幅し、それがさらなるストレスとなって心身に影響を与えます。この孤立状態は、男性ホルモン(テストステロン)の分泌をさらに低下させることがわかっています。その結果、益々コミュニケーションが減少し、ホルモン低下と精神的ストレスを加速させる負のスパイラルを生み出すことになります。

自分の状態をパートナーに理解してもらうために

男性更年期の影響による夫婦間の関係悪化を防ぐためには、自分の状態をパートナーに理解してもらうことが重要です。男性更年期の不調は目に見えにくく、本人でさえ原因を自覚できないことが多いため、何も言わずにいるとパートナーは「冷たくなった」「避けられている」と誤解してしまうこともあります。

大切なのは、体調や心の変化を正直に伝え、共有することです。
お互いに理解を深めることで孤立感を和らげ、安心感を得ることができれば、ストレスが軽減され、ホルモンバランスの改善にもつながります。具体的にどのように自分の状態をパートナーに伝え、コミュニケーションを円滑に進めるかについて解説します。

自分の体調不良をどう伝えるか

体調不良をパートナーに理解してもらうためには、まず自分自身が「今、何がつらいのか」を明確に認識し、素直に伝えることが重要です。

例えば、以下のような伝え方が効果的です。

「最近、疲れが抜けなくてイライラしやすくなっている。」

「仕事のストレスが溜まっていて、精神的にも余裕がない気がする。」

このように、自分の状態を感情を交えず事実として伝えることで、パートナーも理解しやすくなります。

コミュニケーションの透明性を保つ方法

パートナーと良好な関係を保つためには、コミュニケーションの透明性が重要です。以下の方法を取り入れてみましょう。

  1. 定期的な共有の時間を持つ
    週に1回でもよいので、お互いの近況や気持ちを率直に話し合う時間を設ける。こうした時間を持つことで、心の距離を縮めることができ、孤立感を解消する効果があります。
  2. 「私」を主語にして話す
    「私は〇〇と感じる」と自己開示の形で伝えることで、相手を責めることなく共感を得られます。
  3. パートナーの話に耳を傾ける
    自分の不調を伝えるだけでなく、相手の意見や気持ちにも耳を傾けることが信頼関係を築き、互いの理解を深める効果があります。

男性更年期が夫婦関係に及ぼす影響

体調不良が続く原因と男性ホルモンの変化

男性更年期の主な原因は、男性ホルモン(テストステロン)の低下です。テストステロンは、筋力や活力を保つだけでなく、精神的な安定にも関与しています。このホルモンが減少すると、以下のような症状が現れることがあります。

  • 慢性的な疲労感
  • 睡眠障害
  • 集中力や意欲の低下
  • イライラや気分の落ち込み

厚生労働省によると、男性更年期症状を感じている人の約70%が適切な治療を受けておらず、症状を放置することで夫婦間の溝が深まる可能性があることも指摘されています。

感情の波がコミュニケーションを遠ざける

男性更年期に伴う感情の波は、パートナーに対してモラハラになってしまったり、気持ちを傷付けてしまうことがあると理解することが重要です。男性更年期によって、突然怒りっぽくなったり、逆に無気力になったりすることが増えると、相手は「怖い」「避けられている」「冷たい」と感じます。 

さらに、コミュニケーション不足が続くことで家庭内で孤立感が生まれ、孤独感や無力感がテストステロン低下を加速させることがあります。これにより、更年期症状が悪化し、夫婦間の距離がさらに広がるという悪循環に陥ってしまうのです。

パートナーとの関係を良好に保つための実践的な方法

ストレスを減らすための共同作業

ストレスを軽減し、夫婦関係を良好に保つためには、共に取り組む習慣を作ることが効果的です。例えば、以下のような方法があります。

  1. 一緒に散歩をする
    軽い運動はストレスを軽減し、会話の機会を増やします。身体を動かすことで血行が良くなり、気分がリフレッシュされるだけでなく、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌が促進され、心の安定と前向きな気持ちを取り戻す効果があります。パートナーと歩きながら自然と会話が生まれることで、心の距離も縮まります。
  2. 共通の趣味を楽しむ
    映画鑑賞、料理、ガーデニングなど、リラックスできる活動を共有することで、楽しい時間を共に過ごすことができ、心のつながりが深まります。このようなポジティブな体験は、愛情ホルモンとされるオキシトシンの分泌を促し、信頼感と安心感を高める効果があります。二人で笑い合う時間が、心身の健康にも良い影響を与えます。
  3. 家事を分担する
    お互いの負担を減らし、協力する意識を育てることで、「一緒に頑張っている」という連帯感が生まれ、パートナーシップが強化されます。家事を一緒にこなすことで生まれる達成感は、ドーパミンという快感を司るホルモンの分泌を促し、心地よい満足感を共有することができます。小さな成功体験を積み重ねることで、二人の絆はより強固なものになるでしょう。

サポートし合うことで深まる絆

男性更年期の時期は、お互いをサポートし合うことで絆を深める絶好の機会でもあります。パートナーからの理解や支えがあるだけで、精神的な安定感が増し、関係性もより強固になります。

  1. 感謝を伝える
    些細なことでも「ありがとう」と言葉にする習慣をつけることで、相手に大切に思われている実感を与え、関係の安定につながります。このような感謝の言葉は、オキシトシン(愛情ホルモン)の分泌を促し、信頼感や安心感を高める効果があります。お互いに感謝を伝え合うことで、心のつながりが深まり、より温かい関係を築くことができるでしょう。
  2. お互いの空間を尊重する
    一人の時間を確保し、心のリセットを図ることも重要です。自分のペースでリラックスすることで、セロトニン(幸せホルモン)の分泌が促され、心が落ち着き、精神的な安定が得られます。このように心に余裕が生まれると、パートナーに対しても穏やかで思いやりのある態度を保つことができ、より良好な関係を築くことにつながります。

心のケアと共に実践したい習慣

心身の健康を保ち、男性更年期の悪化を防ぐためには、生活習慣の改善も欠かせません。以下のような習慣を取り入れることで、体調も安定し、コミュニケーションの質も向上します。

  1. 規則正しい生活リズムを作る
    十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がけることで、体調が安定し、心に余裕が生まれます。特に、睡眠中にはテストステロンの分泌が活発になり、ホルモンバランスが整えられます。また、栄養バランスの良い食事は、脳内のセロトニン(幸せホルモン)の生成を促し、心の安定をサポートします。これにより、男性更年期特有のイライラや不安感を軽減し、日常生活の質を高めることができます。
  2. 適度な運動を取り入れる
    ウォーキングやストレッチは、心身をリフレッシュさせる効果があり、ストレス解消にもつながります。運動によりエンドルフィン(幸福感を高めるホルモン)が分泌されることで気分が向上し、ストレスによるホルモン低下を防ぎます。また、筋力を維持することでテストステロンの分泌が促進され、男性更年期の症状改善に役立ちます。
  3. リラックスできる時間を確保する
    読書や瞑想など、自分を労わる時間を持つことで、心を落ち着かせ、前向きな気持ちを取り戻すことができます。リラックス時には副交感神経が優位になり、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑えられます。また、瞑想や深呼吸はセロトニンの分泌を促進し、心の安定と質の高い睡眠をサポートするため、男性更年期の改善に効果的です。

まとめ:夫婦関係を強化するための鍵

自分の体調を理解し、パートナーと支え合う重要性

男性更年期による体調不良や精神的な不調は、夫婦関係にも影響を与えます。しかし、自分の状態を理解し、パートナーと共有しながら支え合うことが重要です。男性更年期は避けられないライフステージですが、絆を再確認し、共に乗り越える力を育むチャンスと捉えることで、夫婦関係をより良いものにすることができます。

この記事の監修者

伊勢呂 哲也

医療法人インテグレス理事長
大宮エヴァグリーンクリニック 理事長・院長
東京泌尿器科クリニック上野/
池袋消化器内科・泌尿器科クリニック/
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長

泌尿器科・消化器科の専門領域で年間3万人の外来診察を行う。著書、テレビ出演歴多数。専門Youtubeチャンネルは18万人以上の登録者(2025年1月現在)
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