「眠れない、寝つきが悪い、途中で起きる…」男性更年期がもたらす不眠と対策法

「眠れない、寝つきが悪い、途中で起きる…」男性更年期がもたらす不眠と対策法

眠れない夜、実は男性更年期が原因かもしれない

加齢とともに、夜なかなか寝つけなかったり、途中で目が覚めたり、朝早く目覚めてしまったりするなど、不眠に悩んでいませんか?

このような睡眠やこれに伴う体調不良を、単なるストレスや加齢の影響と考えている方も多いでしょう。しかし、その原因の一つに「男性更年期障害」があることをご存じでしょうか?

男性更年期障害とは、ホルモンバランスの変化によって引き起こされる症状の総称であり、睡眠にも大きな影響を与える恐れがあります。本記事では、男性更年期と不眠の関係について詳しく解説し、適切な対処法を紹介します。

不眠の一般的な原因と男性特有の要因

不眠にはさまざまな要因があります。一般的な原因としてはストレス、生活リズムの乱れ、カフェインやアルコールの過剰摂取、スマートフォン・パソコンの使用などが挙げられます。これらが交感神経を刺激し、眠りを妨げることがあるのです。

この他に男性特有の要因として、テストステロンの低下が関係していることがあります。40代以降の男性は、男性ホルモンの減少により、筋力や持久力の低下、集中力の低下、感情の不安定さといった身体的・精神的な変化を経験することがあります。この変化が原因となり、不眠を引き起こします。そのため、男性更年期による不眠は、単なる加齢やストレスの影響だけではなく、ホルモンバランスの変化が深く関与していることを理解することが重要です。

男性更年期と不眠の関係とは?

男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)は、40代~50代の男性に見られるホルモンバランスの変化によって引き起こされる症状の総称です。

テストステロンの分泌量が低下すると、ストレスに対する抵抗力が低下し、イライラや不安感が増します。これが睡眠の質に影響するのです。

また、男性更年期症状としてのうつ症状や無気力感が、不眠の一因となることも。テストステロンは、脳内の神経伝達物質にも影響を及ぼし、気分を安定させる働きを持っています。
しかし、テストステロンの減少によって気分の落ち込みが続くと、睡眠のリズムが乱れ、寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目覚めたりすることが増えます。そのため、不眠が続く場合には、男性更年期の可能性も考え、適切な対策を取ることが重要です。

男性更年期の症状とその影響

男性更年期障害の症状の中でも、不眠は代表的な症状の一つであり、生活習慣やストレスとも密接に関連しています。男性ホルモンの変化を理解し、適切な対処をすることで、男性更年期障害の影響を最小限に抑えることが期待できます。

ホルモンバランスの乱れが引き起こす不眠

テストステロンの低下は、身体のさまざまな機能に影響を与えます。特に睡眠に関しては、深い眠り(ノンレム睡眠)の減少や、交感神経の過活動による入眠困難、夜間の頻繁な覚醒といった問題が生じることがあります。

また、テストステロンにはストレスホルモンであるコルチゾールの抑制効果があるため、その分泌量が減少すると、ストレスを感じやすくなり不安感が増大します。これにより睡眠の質の悪化という悪循環に陥ることもあります。

更年期の影響を受けやすい40代・50代男性

男性更年期障害の影響を最も受けやすいのは、40代後半から50代前半の男性です。この年代は、仕事の責任が増し、家庭や社会でのプレッシャーが大きくなる時期でもあります。そのため、ストレスや疲労が蓄積しやすく、ホルモンバランスの影響により症状が助長される傾向にあるのです。

また、生活習慣の影響も大きく、睡眠不足や食生活の乱れ、運動不足が重なることで、よりテストステロン減少の影響を受けやすくなります。その結果、睡眠の質が下がり、日中の集中力が低下したり倦怠感が強くなったりという問題が生じることも。

こうした悪循環を防ぐためにも、早めに男性更年期の徴候に気づき、適切な対策を取ることが重要です。

男性更年期による不眠の予防法と改善策

男性更年期による不眠を予防し、また改善するためには、生活習慣の見直しが不可欠です。ここからはホルモンバランスを整えるのに役立つ更年期対策を紹介します。

生活習慣を見直して不眠を解消する方法

まずは、規則正しい生活リズムを確立することが重要です。毎日同じくらいの時間に起床し、就寝することで体内時計を整えましょう。

また、適度な運動を取り入れると、睡眠の質を向上できます。ウォーキングやストレッチなどの軽い運動から始めるとよいでしょう。

食生活の見直しも重要なポイントです。特にカフェインやアルコールの摂取を控えることで、睡眠の質を改善できます。夕食は就寝の2~3時間前までに食べることを心がけ、遅くなってしまった場合には消化に良い食事を選ぶとよいでしょう。

これらの不眠解消法を全て取り入れるのが難しい場合には、一つずつ取り入れるのでも問題ありません。

専門家のアドバイス:男性更年期のサポート方法

不眠が続く場合は、専門家の助言を受けることも検討しましょう。特に、ホルモン補充療法(HRT)を受けることで、ホルモンバランスを整え、不眠の改善につなげられる可能性があります。

また、ストレスや不安が強い場合には、カウンセリングを受けるのも有効です。なお、必要があれば睡眠障害のタイプに合った睡眠薬を使うこともあります。

不眠は放置せず、早期に対策を

男性更年期による不眠を放置すると、生活の質が低下し、健康にも影響を及ぼす可能性があります。早めの対策を取ることで、不眠の早期改善を図りましょう。

自分でできる不眠対策

不眠を改善するためには、リラックスできる環境を整えることも大切です。寝室の温度や湿度を調整し、静かで快適な空間を作りましょう。また、寝る前にスマートフォンやパソコンの使用を控え、リラックスできる音楽を聴いたり、読書をしたりするのも有効です。

専門医に相談するタイミング

1か月以上続く不眠や、日中の倦怠感など日常生活への影響が強い場合は、専門医に相談することをおすすめします。泌尿器科や心療内科、精神科での診察を受け、自分に合った治療法を見つけましょう。

まとめ:不眠に悩んでいる男性へ、男性更年期を知り、予防を始めよう

男性更年期がもたらす不眠の影響を軽視せず、積極的に対策を取ることが重要です。

ホルモンバランスの乱れによる不調は、生活習慣の改善や専門医のサポートを受けることで大きく改善する可能性があります。自分の体の変化に気付き、適切なケアを行うことで、より良い睡眠と健康的な生活を取り戻しましょう。

不眠を放置せず、早期対策を!

不眠は生活の質を大きく低下させるため、早めの対策が重要です。睡眠環境を整え、生活習慣を見直すことで、不眠は改善する可能性があります。特に男性更年期が関与している場合は、ホルモンバランスの調整が有効な場合があるでしょう。

男性更年期を理解し、体調管理を見直そう

男性更年期による不眠は、加齢に伴う変化の一部ですが、適切な治療によって改善できます。ホルモンバランスを意識しながら、ストレス管理や生活習慣の調整を行い、健康的な毎日を送るための第一歩を踏み出しましょう。

【参考文献】
一般社団法人日本内分泌学会.”男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)”.一般の皆様へ.2024年12月10日, https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=71(参照2025-1-30)
筑波大学腎泌尿器外科診療グループ.”男性機能障害”.筑波大学腎泌尿器外科診療グループ, https://www.tsukuba-urology.com/patient/disease/male/(参照2025-1-30)

この記事の監修者

伊勢呂 哲也

医療法人インテグレス理事長
大宮エヴァグリーンクリニック 理事長・院長
東京泌尿器科クリニック上野/
池袋消化器内科・泌尿器科クリニック/
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長

泌尿器科・消化器科の専門領域で年間3万人の外来診察を行う。著書、テレビ出演歴多数。専門Youtubeチャンネルは18万人以上の登録者(2025年1月現在)
伊勢呂哲也Youtubeチャンネル