男性更年期障害かも・・・初めての受診で行う診察と検査の実際

意欲がわかない、集中力が低下している…そんなお悩みから、「自分は男性更年期障害かもしれない」と病院を受診される方が少しずつ増えています。しかし、初めての受診でどんな診察や検査が行われるのか不安に思う方も。そこで、この記事では「男性更年期障害かも」と疑って泌尿器科を受診した際に、どのような診察や検査が行われるのかを解説します。

男性更年期障害とは?

男性更年期障害は、加齢あるいはストレスに伴うテストステロン値の低下により様々な症状をきたす症候群であり、加齢性男性性腺機能低下、すなわちLOH(late-onset hypogonadism:)症候群とも呼びます。

男性更年期障害(LOH症候群)の症状には、下記のようなものがあります。

・身体症状:性機能症状(早朝勃起の低下、性欲の低下、勃起障害など)、筋力の低下、体脂肪の増加、倦怠感・疲労感など

・精神症状:うつ傾向、睡眠障害、記憶力・集中力の低下など

問診・身体測定で、症状と他の疾患の可能性をチェック

病院を受診された患者さんには、まず症状を評価するために、また他の疾患の可能性をチェックするために、問診を行います。効率的かつ網羅的な問診のサポートとして、複数の質問票を用いている病院も多いです。

  1. IIEF5(International Index of Erectile Function:国際勃起能スコアの簡易版):
    性機能障害の症状の有無や程度をチェックするための質問票です。   
  2. SDS(Self-rating Depression Scale:自己消化式抑うつ性尺度):
    男性更年期障害(LOH症候群)による精神症状とうつ病の症状は似通っており、鑑別が難しいため、うつ病のスクリーニングを目的にこちらの質問票を用います。
  3. AMS(Aging Males’ Symptoms)スコア:
    男性更年期障害(LOH症候群)のスクリーニングに最もよく用いられる質問票です。感度は高いものの特異度が低いため、最近では治療の前後に記載してもらい、効果判定に用いることが推奨されています。

その他、身体測定を行い、上記で紹介した症状の原因となるようなリスク要因(糖尿病、腎不全、高度肥満、脳腫瘍、薬剤性など)の有無をチェックします。リスク要因がある場合には、まず原因となる疾患の治療を行います。

血液検査でテストステロン値を測定

男性更年期障害(LOH症候群)の診断は、症状の原因となるような他のリスク因子がないことを確認後、血液検査でテストステロン値を測定したうえで行います。

まずは、男性更年期障害(LOH症候群)治療の禁忌となる疾患の有無やリスク因子を確認するために、糖尿病(HbA1c)のチェック項目、肝機能・腎機能・コレステロール値などメタボリックシンドロームに関連した血液検査、そして身長・体重・腹囲などの身体測定を行います。

男性の体内にあるテストステロンには、数種類のタイプが存在しますが、男性更年期障害(LOH症候群)の診断に用いるのは、

  • 総テストステロン(TT:total testosterone)
  • 遊離テストステロン(FT:free testosterone)

の2つです[1]。

総テストステロン(TT)値が250 ng/dl未満であればその時点で男性更年期障害(LOH症候群)と診断します。また、総テストステロン(TT)値が250 ng/dl以上であったとしても、遊離テストステロン(FT)値が7.5 pg/ml未満であれば、この場合も男性更年期障害(LOH症候群)と診断します[1]。

なお、テストステロン値が低い場合、他のホルモン異常がないか、検査を追加する場合もあります。  

初めての診察の前に知っておくと役立つポイント

・健診結果を持参するとよい

男性更年期障害(LOH症候群)の診察は、まず他の病気やリスク要因が隠れていないか確認するところからスタートします。40~50代の方は、かかりつけ医がいないことも多く、紹介状等で普段の身体の情報を得ることが難しいため、職場での健診結果などを持参すると診察がスムーズに進むでしょう。

・治療開始は2回目以降の診察となる場合もある

すべての検査結果が出てから治療方針を決定するため、テストステロン値の結果が当日に出ない病院の場合、実際の治療開始は早くとも2回目の診察以降となります。そのため、初めて診察したその日に治療が始まると思っていると、がっくりしてしまうかもしれません。あらかじめ「2回目の診察以降に治療が開始となる可能性がある」ことを知っておくと、そのような場合にも、穏やかな気持ちで診察を終えることができるでしょう。

・測定値が基準を満たさない場合の対応

テストステロン値が基準を満たさなかった場合、「よかった」と喜ぶ方もいれば、「治療さえ受けられれば困っている症状から解放される」と期待していたが故にショックを受ける方もいます。しかし、いずれにせよ男性更年期障害(LOH症候群)かどうかは、テストステロンの測定値に関わらず総合的に判断することが重要です。
また症状が強い場合には、期間をあけてテストステロン値の再検査を検討することもあります。生活習慣を見直しながら、生活の質を落としている症状を改善する手だてを主治医と相談していきましょう[2]。

まとめ

男性更年期障害(LOH症候群)で病院を受診する際、「局部を出さないといけないのか」「どれくらい時間がかかるのか」など様々な不安があるかと思います。しかし、初めての診察では、問診票と血液検査のみを実施することが多いです。ぜひ、リラックスして、ご自身の最近の生活や体調を振り返る時間と捉えてみてください。

参考文献

  1. 日本泌尿器科学会ほか編.LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き.
    医学図書出版,2022,4p,18p,20p,29p,45p .
  2. 末富ら.LOH症候群の診断におけるフリーテストステロン2回測定の必要性の検討.日本性機能学会雑誌.2021;36(1):5-12 .

    この記事の監修者

    伊勢呂 哲也

    医療法人インテグレス理事長
    大宮エヴァグリーンクリニック 理事長・院長
    東京泌尿器科クリニック上野/
    池袋消化器内科・泌尿器科クリニック/
    新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長

    泌尿器科・消化器科の専門領域で年間3万人の外来診察を行う。著書、テレビ出演歴多数。専門Youtubeチャンネルは18万人以上の登録者(2025年1月現在)
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