ストレス発散のはずが逆効果?アルコールが心身の不調(男性更年期)を悪化させる仕組みと対策

ストレス発散のはずが逆効果?アルコールが心身の不調(男性更年期)を悪化させる仕組みと対策

男性が中年期以降に経験する体調不良や精神的な不調(不安・焦りなど)には、加齢によるホルモンバランスの変化が大きく関与している場合があります。このような不調をきたした人の中には、不安やイライラを感じた際、アルコールの力を借りようとする人も少なくありません。しかし過度な飲酒は長期的にうつ病を悪化させる可能性が報告されています1)

本記事では、40-50代男性に起きる身体や心の不調(男性更年期)とアルコールの関係について、国内外のガイドラインや研究を踏まえて解説します。

アルコールで不安や焦りを緩和できる? アルコールがもたらす危険な影響とは

過度な飲酒が引き起こす精神的な依存

ストレスや不安、焦りなどを抱えると、一時的に気分転換を求めてアルコールに手を伸ばす人は少なくありません。アルコールには摂取直後にリラックスや高揚感を得られる効果があるのも事実です。 しかし、過度にアルコールに頼りすぎると、脳内神経伝達物質のバランスが乱れ、飲酒しない状態では不安やイライラが強まる「精神的依存」に至る危険があります2)

アルコールの長期的な影響

アルコール摂取後は一時的に気分が改善するものの、体内からアルコールが抜ける段階では脳が過度に興奮状態となり、不安や焦りが増すことが指摘されています2)。 さらに、習慣的な過度の飲酒は睡眠の質を悪化させ、疲労回復を妨げます。その結果として、精神的ストレスを余計に増幅させる悪循環を生むのです。

男性更年期とアルコール:ストレスが引き起こす心身の不調

男性更年期の症状とアルコール摂取の悪循環

男性更年期とは、加齢とともにテストステロンが低下することで、倦怠感や性欲の低下、抑うつ気分など多面的な症状をきたす状態のことをいいます。こうした不調が積み重なると、不安や焦りを紛らわすためにアルコールが利用されることがあります。しかしアルコールが心身へ与える長期的影響の中には、そういった症状そのものを悪化させるリスクがあります3)

アルコールがホルモンバランスに与える影響

過度のアルコール摂取は肝機能を損ねるだけでなく、テストステロン生成を阻害したり、代謝に影響を及ぼしたりする場合があります。

そもそも男性更年期は、テストステロンが減少している状態です。そのうえアルコールによってホルモンバランスが乱れると、筋力低下や性機能低下、さらには気分障害などを助長する可能性が高まります4)

アルコールによる不安や焦りの緩和を避けるための対策

精神的なストレス管理法/健康的なストレス解消法とライフスタイル改善

不安や焦りをアルコールで解消し続けると、依存リスクが高まります。まずはストレス要因を整理すること、また、ストレスの解消にはアルコールに頼らない次のような手段を試すことも重要です。

  • コミュニケーション: パートナーや友人への相談は、悩みを客観視する一歩となります。
  • 運動習慣の導入:軽いウォーキングや筋力トレーニングはテストステロンの維持にも有益です。
  • 十分な睡眠:アルコールを控えて質の良い睡眠を確保することで、ホルモンバランスやメンタルを安定させやすくなります。
  • 適切な趣味やリラクゼーション:瞑想や読書など、アルコール以外の方法で心を落ち着かせる習慣を身につけましょう。
  • 専門家への相談:内科・泌尿器科で男性更年期の有無を調べつつ、精神科・心療内科でメンタル面のケアを受けることも検討してみてください。

男性更年期の兆候を見逃さないために

精神的な不調と身体の不調に対する気づき

男性更年期の症状は、加齢のせいと見過ごされやすいです。下記のような兆候に心当たりがあれば、一度医療機関での検査・相談も検討してください。

  • 倦怠感や疲れが抜けない
  • イライラや不安感の増加
  • 性欲・集中力の低下
  • 思考力・記憶力の低下

予防と早期対策

男性更年期の悪化を防ぐには、食生活や運動習慣を見直すことが第一歩です。テストステロン補充療法などの選択肢も存在し、これらを受けるためには専門医の診察が必要です。男性更年期を疑った際には他の記事も参照しながら、早めに受診するようにしましょう。

まとめ:ストレス緩和とアルコール摂取を見直す

アルコールを避けるための生活習慣改善

過度な飲酒は「不安→焦り→アルコール」の悪循環を招きやすいため、適量を守る・休肝日を設けるなど、小さな工夫から始めましょう3)

健康的なメンタルケア

男性更年期による心身の不調は、早期に気づき対処することで軽減できます。アルコールに頼りすぎるのではなく、専門家の力を借りる、あるいは運動や睡眠環境を整えるなど、「根本的な改善」を目指すことが肝要です。

終わりに

過度な飲酒がもたらすリスクや男性更年期の可能性に気づき、専門家の診察や生活習慣の改善を検討することが、心身の健康を守る上で不可欠です。本記事が、自分に合った健康的なストレス解消法を見つけ、アルコール以外の方法で「不安→焦り→アルコール」の悪循環から抜け出すきっかけになれば幸いです。

主な参考文献

  1. Boden JM, Fergusson DM (2011)
    ○ “Alcohol and Depression”. Addiction;106(5):906-914.
  2. National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism (NIAAA)
    ○ “Alcohol’s Effects on the Body”.
  3. WHO
    ○ Global Status Report on Alcohol and Health.
  4. Emanuele MA et al. (1998)
    ○ “Alcohol’s Effects on Female Reproductive Function”. Alcohol Health Res World;22(3):195-201.

この記事の監修者

伊勢呂 哲也

医療法人インテグレス理事長
大宮エヴァグリーンクリニック 理事長・院長
東京泌尿器科クリニック上野/
池袋消化器内科・泌尿器科クリニック/
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長

泌尿器科・消化器科の専門領域で年間3万人の外来診察を行う。著書、テレビ出演歴多数。専門Youtubeチャンネルは18万人以上の登録者(2025年1月現在)
伊勢呂哲也Youtubeチャンネル