「全部完璧にこなさなければ」――その思い込みがあなたを削る
職場では中核、家庭では頼られ、社会的責任もずしりとのしかかる、40〜50代。
そんな立場ゆえに「ミスは許されない」「最後は自分が締めるしかない」と力んでいませんか?
けれど研究では――
完璧主義の人ほど燃え尽き症候群に陥りやすい。
43件の先行研究をまとめて比べたところ、完璧を求める姿勢とバーンアウトのあいだにはっきりした結びつきが見つかりました。
「100点」を狙い続けることこそ、心身の電池を空っぽにする最大の要因かもしれません。
“80点主義”がもたらす3つのメリット
- 決断が速い
いくつかの意思決定実験では、つねに「最高」を探す人より「これで十分」と区切りを付ける人のほうが、判断が迅速で満足度も高い結果が出ています。 - エネルギーが温存できる
小さなタスクにこだわらない分、本当に大事な局面にパワーを回せる。 - 周囲と協働しやすい
“任せる勇気” が生まれ、人に仕事を引き継ぎやすくなる。
「頑張りすぎ」を手放す7つの実践術
1.タスクを3色に仕分け
- 赤:自分が丁寧にやる(社外プレゼンなど)
- 黄:80点で良い(社内報告書)
- 青:誰かに任せる(フォーマット作成など)
2.ポモドーロで“強制ピットイン”
25〜30分ごとに5分休憩、あるいは50分ごとに10分休憩を挟む方法。
大学生〜社会人を対象とした実験で、自己流の休憩より疲労度が低いことがわかっています。
3.スマホは視界から隠す
スマホが机上に置いてあるだけで、注意力が下がるとの報告があります。作業中は、バッグの中などにしまってしまうというのも、ひとつの手です。
4.「good enough」チェックリスト
仕事の仕上げ前に「目的を果たしているか」「読める・動く・伝わるか」を確認。Yes なら 80 点到達とみなして次へ。
5.月45時間を超えない残業設計
厚労省ガイドラインは時間外労働は原則月 45 時間以内とし、管理職も自ら健康管理するよう求めています。
どうしても時間を超過してしまいやすい人は、予定表に「帰宅アラート」を入れてみるのはどうでしょう。
6.“手放す日”をカレンダーに固定
週1回は「スライドの色をそろえない」「メール返信は翌朝」といった意識的な手抜きデーを設定。バッファを作る習慣が心の余裕に。
7.たまには「敢えて 60 点」を味わう
趣味の料理や筋トレで“適当”を許す練習を。失敗しても命題は小さい。「まあいっか」が言える経験が、仕事でもブレーキをかけてくれます。
まとめ――80 点の積み重ねが、あなたを守る
“責任世代” が長く走り続けるには、フルパワーよりも長持ちバッテリーが必須。
完璧の呪縛を一段ゆるめ、「これで十分」と言える自分を育てましょう。
100 点で1回より、80 点で10 回。そのほうが成果も、あなた自身も、きっと持続します。
参考文献
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- 厚生労働省. ストレスへの気づきと対処. e-ヘルスネット; 2023. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-001.html
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