近年、早期退職を募る企業が話題となったり、老後2000万円問題が顕在化してきたりと、将来への不安を感じる要素が増えています。特に40代~50代の男性は、仕事や家庭、健康面での変化に直面しやすく、「このままで大丈夫だろうか?」と不安を抱くことが増える時期です。
こうした状況の中で、自信を喪失し、精神的な落ち込みや不安感に悩まされる人も少なくありません。その原因のひとつとして、男性更年期による体の変化が影響している可能性があります。
今回は、自信喪失や不安感の背後にある男性更年期の影響を解説し、自信を取り戻すための実践的な対策を紹介します。
自信をなくしやすいのはなぜ?40代・50代男性が直面する心理的変化
精神的な落ち込みと自信を失う心理的メカニズム
40代~50代の男性は、家庭でも仕事でも責任が大きくなる時期です。その一方で加齢による体の変化を感じる時期でもあり、「今までの自分と違う…」という状況に遭遇し、自信を喪失しやすい時期です。
若い頃は、難しい仕事にも果敢に挑戦し、成功体験を積み重ねることで自信を得てきたという人も多いでしょう。しかし、年齢を重ねるにつれ、小さなミスでも過度に落ち込み、「もう以前のようにはできないのではないか」と不安を感じることが増えてきます。
例えば、若い頃は失敗しても「経験のうち」と前向きにとらえられたものが、40代以降では「もう自分には無理かもしれない」とネガティブに捉えてしまうことが多くなります。これは、社会的な責任が増え、「ミスをしてはいけない」というプレッシャーが強くなることも影響しています。
さらに、職場では、管理職など重要なポストにいる場合ほど、若いころのように挑戦する機会が減るため自己成長を感じにくくなり、結果として自信を喪失しやすくなるのです。
このように、過去の成功体験があるからこそ、小さなミスを大きく捉えてしまい、自信を失うという状況が生まれやすくなります。
この心理的な変化には、更年期によるテストステロンなどのホルモンの低下が関連しているケースが多く、精神的な落ち込みや不安感を引き起こす要因となっているのです。
理由はわからないけど不安… —40代・50代男性に多い悩みとは
40代以降の男性の中には、何か大きなトラブルがあるわけでもなく、不安を感じるという人が少なくありません。次のような漠然とした不安を感じたことがあるという人も多いのではないでしょうか。
- 仕事の不安
「このまま今の職場で働き続けられるのか?」 - 経済的な不安
「子供の教育資金や老後の資金は足りるのか?」 - 健康面の不安
「最近、疲れやすくなった。大きな病気がかくれていないか心配」 - 家庭の不安
「子どもの進学や独立、夫婦関係の変化にどう対応すればいいか」
これらの不安が積み重なると、心身にストレスがかかり、気分の落ち込みや無気力感から自信喪失につながる恐れがあります。
男性更年期がメンタルに与える影響—気づかぬうちに進行する変化とは
男性更年期の症状とは?
男性更年期は、テストステロンの低下によって引き起こされます。個人差がありますが、男性更年期は次のような症状を引き起こします。
- 精神的な症状
不安感、イライラ、気分の落ち込み、自信喪失、集中力の低下 - 身体的な症状
疲労感、睡眠障害、発汗、筋力低下 - 性機能の低下
性欲の減退、勃起不全(ED)
上記のような症状が、重なり合い様々な症状として表れ、特に精神的な影響が大きく、「やる気が出ない」「何をやっても楽しくない」と感じることが増える傾向にあります。
不安感や自信喪失の背後にあるホルモンの影響
テストステロンには、自信や意欲を高める働きがあります。そのため、このホルモンが減少すると次のような影響が出やすくなります。
- 感情のコントロールが難しくなり、イライラや不安が増加
- モチベーションが低下し、仕事への意欲や挑戦する気力の消失
- 睡眠の質が悪化し、不眠、早朝覚醒が増加
こうした変化が積み重なることで、さらに自信喪失や不安感が悪化していきます。
男性更年期に気付き、対処する方法
男性更年期の早期症状を見逃さない
男性更年期は、加齢によるテストステロンの低下により、気持ちの落ち込みや不安感、さらには体のだるさや疲れやすさを感じやすくなるという変化を引き起こしますが、真面目で頑張る人ほど、「仕事のしすぎかな」「年齢のせいかな」と他の原因だと思いがちです。
男性更年期の悪化を避けるためには、早期症状を見逃さないことが重要です。次のような症状があるという人は、早めに対処することが大切です。
- 何となくやる気が出ない、意欲が低下する
- 些細なことでイライラすることが増える
- 仕事のミスが増え、集中力が続かない
- 夜中に目が覚めることが多くなり、熟睡できない
- 身体がだるく、以前より疲れやすくなる
これらの変化が続く場合には、男性更年期を疑い、自己判断せずに専門の医師に相談することです。ホルモン検査を受ければ、テストステロンの低下が原因かどうかを明確にし、必要に応じてホルモン補充療法(HRT)などの治療法を検討することができます。まずは、ご自身の体と心の変化に気づくことから始めましょう。
不安感や自信喪失が改善されない理由
「しっかり休んでも疲れが取れない」「気持ちが落ち込んだままで改善しない」といった状態が続く場合、男性更年期に関わる下記のような要因が影響している可能性があります。
- テストステロンの低下
テストステロンが減少すると、脳内のセロトニンやドーパミンの分泌にも影響を与え、気分の落ち込みや意欲の低下が長引きやすくなります。 - 生活習慣の乱れ
加齢とともに基礎代謝や内臓機能の低下も起きるため、食生活の乱れや運動不足は、生活習慣病などを引き起こします。はっきりとした症状ではないけれど、体調が悪いという不定愁訴が続くとメンタルにも影響を及ぼします。そのため、栄養バランスの良い食事や適度な運動を取り入れることが、メンタルヘルスの向上に欠かせません。 - 社会的な孤立
職場や家庭での役割が変化し、社会的なつながりが減ると、孤独感が増し、不安感が悪化することがあります。意識的に人との交流を持ち、気軽に話せる環境を作ることが大切です。 - 専門的なサポートを受けていない
更年期の症状は、精神的な疾患と誤解されることも多く、適切な治療を受ける機会を逃してしまうことがあります。カウンセリングや医師の診察を受けることで、自分に合った適切な対策を知ることができます。
精神的な健康を取り戻すために—男性更年期の対策法
心のケアと男性更年期の改善法を実践しよう
男性更年期は、多くの男性が経験する自然な変化です。年齢のせいと放置してしまうと精神的な不調が長期化してしまうことがあります。深刻な状態になる前に、対策を講じることが重要です。
- 成功体験を積む
成功体験を繰り返すことが自信を回復するには有効です。過去の成功体験を振り返るだけでなく、日常の中で小さな目標やタスクを決め、実行していくこともお勧めです。毎日、一駅歩くや、駅では階段を使う、寝る前に腹筋をするなど、小さな達成感を大切にしてください。日々の「できたこと」に目を向けることが、自信の回復につながります。 - 適度な運動を取り入れる
ウォーキングや筋トレ、ヨガなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけることで、テストステロンの分泌を促し、気持ちの安定につながります。 - 睡眠の質を改善する
寝る前のスマホ使用を控え、リラックスできる環境を整えましょう。寝酒の習慣がある人は、実は逆効果です。寝酒を止めるのが難しい場合には、医師に相談することをお勧めします。 - 食生活を改善する
タンパク質やビタミンを意識したバランスの良い食事を心がけることで、ホルモンバランスが整いやすくなります。加工食品や糖質が多い食品は控えることがお勧めです。 - 専門家に相談する
男性更年期に深く関与するテストステロンは、検査で定量的に見ることができます。男性更年期を疑う身心の変化があるという人は、医師に相談し、テストステロンの量を知ることで適切な対策を講じることができます。
まとめ—不安や自信喪失と向き合い、前向きに生きるために
男性更年期は、一人で悩む必要はありません。適切な対処を行うことで、不安感や自信喪失を克服し、充実した日々を取り戻すことができます。何より大切なのは、ご自身の変化に気づき、無理をせず向き合うことです。今できることから、少しずつ取り組んでみましょう。
この記事の監修者

伊勢呂 哲也
医療法人インテグレス理事長
大宮エヴァグリーンクリニック 理事長・院長
東京泌尿器科クリニック上野/
池袋消化器内科・泌尿器科クリニック/
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長
泌尿器科・消化器科の専門領域で年間3万人の外来診察を行う。著書、テレビ出演歴多数。専門Youtubeチャンネルは18万人以上の登録者(2025年1月現在)
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