40代から訪れるかも?心身の変化と社会からの孤立──男性更年期がもたらすリスクとは

40代・50代の男性といえば、経験も実績も積み重ね、まさに働き盛りの時期。しかし、その一方で責任は増し、仕事や家庭のプレッシャー、社会的な役割の重さにストレスを感じることも多くなります。

「以前はもっとアクティブだったのに、最近どうも気力が湧かない」

「人と会うのが億劫で、つい一人で過ごしがちになっている」

「疲れが抜けず、なんとなく体が重い」

こうした変化を「年齢のせい」や「仕事が忙しいから」と片付けてしまう男性は少なくありません。しかし、その心身の不調を放置していると、「気づけば社会から孤立してしまっていた…」というケースもあります。

実は、この時期の男性の約7割が何らかの身心の変化を感じているという報告があり、その背景には男性更年期(加齢に伴うテストステロンの低下)が関係している可能性があります。テストステロンの減少は体調だけでなく、気力や意欲にも影響を与え、ひいては社会的な孤立を招く原因にもなり得るのです。

本記事では、「男性更年期が招く社会的孤立」にテーマに原因と対策について詳しく解説します。若い時と何かが違うと感じているという読者の方には、ぜひ読んでほしい内容です。

社会的孤立の原因と男性更年期の関係

男性更年期(テストステロンの低下)が引き起こす心理的変化とその影響

40代・50代の男性に訪れる身体と心の変化の背景には、男性ホルモン「テストステロン」の低下が大きく関わることがほとんどです。テストステロンの働きは「男性らしさ」を作るホルモンとして知られていますが、それだけではありません。テストステロンは男性の活力・意欲・自信・ストレス耐性など、メンタルにも強く影響を与える重要なホルモンです。
しかし、テストステロンの分泌量は20歳がピークとなり、加齢とともに減少し、その結果、様々な心身の変化が生じることがあります。

1. やる気や意欲の低下

テストステロンは「やる気ホルモン」とも呼ばれ、目標に向かう意欲や達成感を感じる力を支えています。
しかし、テストステロンが減少すると、これまで当たり前にできていた仕事や趣味に対して興味を失い、「何をするにも面倒だ」と感じるようになります。

2. うつや不安感の増加

テストステロンはストレスへの耐性を高め、ポジティブな気持ちを保つ役割を持っています。テストステロンの分泌が減ることで気分の落ち込みや不安感が強まり、うつ傾向になることもあります。
以前だったら気にならなかったような些細なことで落ち込んだり、漠然とした不安を感じたりする場合は、テストステロンの低下が影響している可能性があります。

3. イライラしやすくなる

以前は冷静に対処できていたことでも、急にイライラしやすくなったり、怒りっぽくなったりすることがあります。
これは、テストステロンの減少によって感情をコントロールする力が低下し、ストレスに対する耐性が弱くなるためです。特に、職場や家庭での小さな出来事に対して過剰に反応してしまう場合は要注意です。

4. 自信の喪失と自己肯定感の低下

テストステロンには、自己肯定感を高め、「自分はできる」という前向きな気持ちを持たせる働きがあります。しかし、テストステロンが低下すると、自信を失いやすくなり、「どうせ自分なんか」と消極的になることがあります。
こういった心理的変化は、仕事だけでなく、人間関係にも影響を及ぼし、社会的な孤立につながることもあります。

5. 人付き合いが億劫になる

以前は社交的で仲間との飲み会や趣味の集まりに積極的に参加していたのに、「なんとなく行きたくない」「人と会うのが面倒」と感じるようになるのも、テストステロンの減少の影響です。
社交的なエネルギーが低下すると、友人関係や職場の付き合いが減り、気づけば孤立してしまうという望まぬ状況になってしまうこともあります。

ストレスホルモン「コルチゾール」とテストステロンの関係

40代・50代の男性の心理的変化には、加齢によるテストステロンの低下だけでなく、ストレスホルモン「コルチゾール」の影響も大きく関わることがあります。
男性にとってテストステロンが大切なホルモンであることは広く認知されていますが、コルチゾールについてはまだあまり知られていないと思いますので、分かりやすく解説していきます。

人間はストレスを感じると、体内で抗ストレスホルモンである「コルチゾール」を分泌します。コルチゾールは、危機的状況から身を守るために働く重要なホルモンで、次のような働きがあります。

1. 血糖値を上昇させ、エネルギーを供給

2. 炎症を抑え、免疫機能を調整

3. 心拍数や血圧を上げ、緊急時に備える

    こういったコルチゾールの働きによって、一時的なストレスから身体を守り、正常な状態を維持することができます。しかし、常に強いストレスを抱えているとコルチゾールは過剰に分泌され、次第に体に悪影響を及ぼすリスクがあります。

    コルチゾールは副腎で作られていますが、副腎はコルチゾールだけではなくDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)というホルモンも作っています。コルチゾールの過剰分泌が続くと副腎が疲れてしまい、副腎疲労という状態を引き起こし、DHEAの分泌も低下します。DHEAは、テストステロンの元となる物質であり、DHEAの減少はテストステロンの低下を引き起こします。

    つまり、ストレスによってコルチゾールが過剰に分泌されると、テストステロンが低下し、これによって男性更年期の症状がさらに悪化するという悪循環に陥る可能性があります。

    体調不良が対人関係に与える影響

    男性更年期の影響は、メンタルだけでなく、身体的な変化にも現れます。慢性的な疲労感 や 関節痛、筋力の低下 などが生じることで、活動量が減り、人との交流を避ける要因となります。
    また、活動量が減るとドーパミンやセロトニンなどのホルモンの分泌にも影響し、不眠や睡眠の質の低下を招き、日中の集中力やパフォーマンスも低下し、仕事でもミスが目立つなど、生活に支障をきたすこともあります。仕事でのミスは、信頼関係を損ない、対人関係がぎくしゃくする結果となることもあります。

    また、テストステロンの減少により性機能が低下することもあり、パートナーとの関係にも影響を及ぼします。その結果、自信を失い、人とのつながりを避けるようになり、ますます孤立が深まるという悪循環を生んでしまうことがあります。

    そうならないためには、男性更年期による変化に向き合っていくことが重要となります。

    男性更年期による変化にどう向き合うか

    身体と心の変化を理解する

    若い頃は、テストステロンの分泌によって活力が保たれ、仕事や趣味、人付き合い、恋愛などに積極的に取り組むことができます。また、ドーパミン・セロトニン・オキシトシン・エンドルフィンといったホルモンもバランスよく分泌され、心身の安定が維持されます。

    しかし、加齢とともにテストステロンが減少すると、これらのホルモンの相互作用が乱れ、気分の落ち込みや意欲の低下、体力の衰えが顕著になります。その結果、日常生活に対するモチベーションが下がり、人との関わりも消極的になりがちになります。

    多幸感をもたらすセロトニンや愛情ホルモンと言われるオキシトシンは、人との関わりの中で分泌されることもあり、家族や恋人など近しい人とも距離ができてしまうと、ますます悪循環になります。

    そうならないためにも対処法について触れていきます。

    感情の波とどう付き合うか

    これまでの解説で、男性更年期によって感情の浮き沈みが起きることはご理解いただけたと思います。テストステロンの分泌を促し、ストレスをコントロールすることで、感情の安定を計ることができます。

    1. 適度な運動を取り入れる

    運動により筋肉を刺激するとテストステロンの分泌を促進します。また、適度な運動はエンドルフィンの分泌を増やし、ストレスの軽減や気分の向上につながります。

    • ウォーキング

    一定のリズムで同じ動きを繰り返すウォーキングなどの運動は、気分を安定させるセロトニン(幸福ホルモン)を増やす効果があり、リラックス効果をもたらします。

    • 筋トレ

    筋肉が刺激されるとテストステロンの分泌が増えます。また、筋力量の増加によってもテストステロンが増え、自信の向上にもつながります。さらに、筋トレによりエンドルフィンの分泌が促され、気分が向上し、ストレス軽減にも役立ちます。

    2. バランスの取れた食事を心掛ける

    食事はホルモンバランスを整える上で非常に重要です。特に、テストステロンやセロトニンの生成に必要な栄養素を意識的に摂ることが大切です。

    • タンパク質(肉・魚・卵・大豆製品)
      筋肉を維持し、テストステロンの生成をサポートします。
    • 亜鉛(牡蠣・ナッツ・レバー)
      テストステロンの分泌を促進し、免疫力も向上させます。
    • ビタミンB6(バナナ・さつまいも・鶏肉)
      セロトニンの生成を促し、気分を安定させる効果があります。

    3. ストレス管理を意識する

    慢性的なストレスは、ストレスホルモンコルチゾールを過剰に分泌させ、テストステロンの低下を引き起こします。そのため、意識的にリラックスする時間を作ることが重要です。

    • 瞑想や深呼吸副交感神経を優位にし、コルチゾールの分泌を抑える効果があります。
    • 趣味の時間を確保読書・音楽・映画・ガーデニングなど趣味を持つことで、ストレスを軽減し、気分をリフレッシュできます。
    • 入浴やマッサージ血流を促進し、リラックス効果を高めます。

    4.日記をつける

    日々の感情や体調の変化を記録することで、自分の心理状態を客観的に把握し、適切な対策をとることができます。

    • 気分や体調の変化を記録
      ストレスの原因やパターンを特定しやすくなります。
    • 前向きな出来事を書く
      ポジティブな思考を習慣化し、セロトニンの分泌を促進できます。
    • 感情を書き出す
      不安やイライラを整理し、ストレスを軽減できます。

    社会的孤立を防ぐための具体的な方法

    男性更年期やストレスによる心理的変化が進むと、人との関わりを避けがちになり、社会的孤立につながる可能性があります。
    しかし、意識的にコミュニケーションの機会を増やし、活動に参加することで、この悪循環を断ち切ることができます。まずは行動することが重要です。

    1. コミュニケーションを積極的に取るためのヒント

    人との関わりが減ると、孤独感が増し、コルチゾール(ストレスホルモン)の分泌が増加する一方で、オキシトシン(愛情ホルモン)やセロトニン(幸福ホルモン)の分泌も低下していきます。 これらのホルモンを増やすためには、積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。

    • 家族や友人との連絡を増やす

    短い会話でも、家族や友人と連絡を取ることで、精神的な安定感を得ることができます。特に男性は「困ったときにだけ連絡する」傾向があるため、普段から何気ない会話をする習慣を持つことが大切です。

    • 職場の同僚や知人との会話の機会を増やす

    「雑談は無駄」と考えがちですが、職場のランチやちょっとした会話は、ストレスを軽減し、孤独感を和らげる効果があります。

    • 共通の趣味を持つ仲間を見つける

     仕事以外のつながりを持つことで、新たな視点が生まれ、生活にメリハリがつきます。オンラインの趣味コミュニティやSNSを活用するのもお勧めです。

    2. 新しい趣味や社会的活動への参加

    新しいことにチャレンジし、小さな目標を立てることで、意欲や自信が回復しやすくなります。 また、活動を通じて新たな人間関係が築けるため、孤立を防ぐ効果もあります。

    • スポーツやフィットネスクラブに参加する

     運動はテストステロンを増やすだけでなく、エンドルフィン(幸福ホルモン)の分泌を促し、ストレス解消につながります。さらに、ジムやスポーツクラブでの交流を通じて、自然と人間関係が広がります。

    • 地域のイベントやボランティア活動に参加する

     地域のイベントやボランティアに参加すると、人とのつながりが生まれ、社会的な役割を感じることができるため、自己肯定感が向上します。

    • 習い事を始める(音楽、料理、アートなど)

     新しいスキルを学ぶことは、脳を活性化し、テストステロンやドーパミン(やる気ホルモン)を分泌させます。好きなことを続けることで充実感が得られ、スキルを習得することが成功体験となり、自己肯定感が高まります。

    3. 心のケアとサポートネットワークを築く

    心理的なケアを行い、信頼できる人とつながることで、孤立を防ぎ、心身の健康を維持できます。

    カウンセリングやメンタルヘルスの専門家に相談することもお勧めです。  

    まとめ

    社会的孤立を防ぐためには、意識的に人と関わり、活動の幅を広げることが重要です。

    小さな一歩からでも良いので、できるだけ人とのつながりを持ち、心身の健康を維持することが、男性更年期による孤立を防ぐ鍵となります。

    この記事の監修者

    伊勢呂 哲也

    医療法人インテグレス理事長
    大宮エヴァグリーンクリニック 理事長・院長
    東京泌尿器科クリニック上野/
    池袋消化器内科・泌尿器科クリニック/
    新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長

    泌尿器科・消化器科の専門領域で年間3万人の外来診察を行う。著書、テレビ出演歴多数。専門Youtubeチャンネルは18万人以上の登録者(2025年1月現在)
    伊勢呂哲也Youtubeチャンネル