40歳以上の男性必見!特定健診からみえる男性更年期障害のリスク

四十にして惑わず。有名な孔子の言葉の一節ですが、平均寿命がずいぶんと長くなった現代では、40歳を過ぎてくると迷わないどころか、ふんばりがきかなくなってきたなど意欲の低下、集中力の低下を感じる方が増えてくるようです。

近年、そのような症状で悩まれている男性の中に、実は男性ホルモンの低下による男性更年期障害が原因となっている方が少なくないことが注目されています。しかし、自分が男性更年期かもと思っても、意欲の低下ごときで病院を受診するのは敷居が高いうえにそんな暇はないというのが正直なところではないでしょうか。そのような病院と縁遠い男性の方々でも医療に接触できる数少ない機会が定期健康診断です。

本記事では、定期健康診断のうち40歳以上で受ける特定健診と男性更年期障害のリスクの間にどのように関係しているかを解説します。

男性更年期障害とは?

男性更年期障害は、男性ホルモンの1つであるテストステロンの分泌が減少することで引き起こされ、身体的症状(疲労感、筋力低下、体脂肪の増加、性欲減退・勃起不全などの性機能障害)や精神的症状(イライラ、集中力の低下、不安感)など幅広い症状をきたします。

女性の場合は50歳前後で閉経し女性ホルモンが急激に低下するため、同じ年代で更年期障害の症状が出やすいですが、男性の場合は加齢とともに緩やかに男性ホルモンが低下していくため、症状の出方にはかなり個人差があると言われています。

特定健診の目的

定期健康診断のうち、特定健康診査・特定保健指導(特定健診)は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した健診で、国の法律によって医療保険者が40歳以上の加入者を対象に年1回実施することが義務づけられています。

メタボリックシンドロームは、日本人の死因の上位に位置する心疾患や脳血管疾患といった生活習慣病の要因の1つとされているため、特定健診でリスクのある方を早期発見し、保健指導で生活習慣病の予防につなげることを目指しています。

※自営業や個人事業主などで国民健康保険に加入している方は、特定健診を受ける機会がないため、自治体などが実施する健診をご自身で受診していただく必要があります。

メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドロームとは、肥満、特に内臓脂肪型肥満を背景に、高血圧や糖尿病、高コレステロール血症など心臓病のリスクが複数、重なっている状態のことをいいます。内臓脂肪を減らすことで、複数のリスクをまとめて取り除くことができます。

メタボリックシンドロームと男性ホルモン

肥満・メタボリックシンドロームと男性ホルモン低下は、お互いに関係しあっていることがわかっています。男性ホルモンの低下は内臓脂肪を増加させメタボリックシンドロームの原因に、逆に肥満は男性ホルモン低下の原因になると言われています。その裏付けとなるように、食事・運動療法で体重を減少すると、男性ホルモンが増加したという報告もあります。

また、男性ホルモンが少ないことは、糖尿病の発症や高血圧と関連すると言われており、生活習慣病との関連も注目されています。

特定健診で特にチェックすべき項目

メタボリックシンドロームと生活習慣病の早期発見を目的としている特定健診では、すべてが重要ではあるのですが、今回は男性更年期障害の観点から特にご注意いただきたい項目をご紹介します。

・身体計測:腹囲
・血圧測定:血圧値
・採血:空腹時血糖またはHbA1c、中性脂肪・HDLコレステロール

これらの項目で「要精査」「要注意」という結果が返ってきた場合は、男性更年期障害をきたすリスクが高い状態であると考えられるでしょう。

しかし、実際に男性更年期障害を生じているかは、血中の男性ホルモン値の測定などの精査が必要となってきます。
男性更年期障害の症状があり、特定健診の結果からメタボリックシンドロームや生活習慣病のリスクがあると考えられる方は、病院を受診したり、男性更年期障害のオプション検査を実施している人間ドックを受けたりするとよいでしょう。
近年では、男性更年期障害への注目が高まっていることから、人間ドックで男性更年期障害のオプション検査を設けている施設も徐々に増えてきているようです。

まとめ

このように、男性更年期障害はメタボリックシンドロームや生活習慣病と深い関係があります。そして、メタボリックシンドロームや生活習慣病の早期発見・予防を目的とする特定健診を受け、結果を確認することで、自分に男性更年期障害のリスクがどれくらいあるかがわかります。

男性更年期障害の症状があろうとなかろうと、特定健診で肥満や生活習慣病のリスクを指摘された方は、気落ちせず、でも無視はせず、今後元気で楽しい人生を過ごすためのチャンスだと捉え、まずは生活習慣の改善を意識していきましょう。

参考文献
日本泌尿器科学会ほか編. LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き.医学図書出版,2022,134p.

この記事の監修者

伊勢呂 哲也

医療法人インテグレス理事長
大宮エヴァグリーンクリニック 理事長・院長
東京泌尿器科クリニック上野/
池袋消化器内科・泌尿器科クリニック/
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長

泌尿器科・消化器科の専門領域で年間3万人の外来診察を行う。著書、テレビ出演歴多数。専門Youtubeチャンネルは17万人以上の登録者(2024年12月現在)
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