みなさん、こんにちは。活性研の金井です。
先日も朝のテレビ番組の男性更年期障害の特集で、片岡鶴太郎さんが「朝起きたら鉛を飲んだような重苦しさ」と当時の状況をお話されていましたが、男性更年期の認知の広がりとともに、私のもとにもご相談が増えてきています。
多いときには月に4〜5件ほどのご相談を頂きますが、今日はその中から40代の男性(仮名:吉岡さん)の例をご紹介したいと思います。
企業経営者 吉岡さんの場合
・仮名:吉岡さん
・年齢:40代男性
・職業:中堅企業経営者
吉岡さんとは面識はありませんでしたが、私が、X(旧Twitter)で男性更年期について投稿した内容をたまたま見たらしく、突然以下のようなDMが来たのを覚えています。
「金井さん、初めまして。吉岡と申します。突然のDM失礼いたします。先日投稿された男性更年期についてですが、まさに自分に当てはまるのではないかと思いDMさせて頂きました。どうすればいいのか悩んでおりましたので、一度お話を聞かせて頂けませんでしょうか」
私の職場と吉岡さんの職場がたまたま近かったこともあり、近くのカフェで直接お会いすることになりました。
元気だった頃の吉岡さん
お会いした当日ですが、DMの印象とは違いとても弱っているようには見えない、精悍な顔つきで、体もたくましく身長は私と同じくらい(178cm)程度で、出来るビジネス‐パーソン、といった第一印象でした。
都内の大学を卒業され、それから数年ほど会計事務所で会社員としてお仕事をされた後、いつかは自分の会社を持ちたいという強い思いから独立され、もう創業10年以上経営者として第一線で活躍されております。
吉岡さんの会社の事業内容はDNA鑑定事業をされており、社員数十名の規模で日々忙しく働かれています。
DNA鑑定というのは、犯罪捜査や遺失物のための身元確認、親子関係を確認するための親子鑑定、疾患リスク評価のための遺伝子疾患検査などがその主目的のようですが、吉岡さんの会社は、この中でも親子関係の証明案件が多く、主たる依頼主は裁判所になります。
このDNA鑑定作業は、いくつかのプロセスに分かれており(サンプル採取→DNA抽出→DNA抽出増幅→DNA解析→データ解析→鑑定書作成)、中でも鑑定書の作成は、誤字脱字はもちろんのこと字体の使い分けや表現一つも意識する必要があり、作成するための30分〜1時間は全集中で神経をすり減らすほどでした。
それはそうです、万が一吉岡さんの作成する鑑定書に不備があると、裁判の判決に影響を及ぼし、それがために親子関係が証明できない、相続が認められないなどの重大な問題に発展する可能性があります。
ですので、鑑定書を作成する間は、吉岡さんは自分の部屋にこもり他者の入室はもちろんのこと、スマホの電源も切り、音の出るものは全てシャットアウトし、神経を注ぎ一言一句、推敲を重ねて鑑定書に向き合う必要があり、作り終えたときは、達成感よりも脱力感の方が勝っていました。
それは突然やってきた
吉岡さんが45歳の時です。
これまで集中してできていた1時間の鑑定書作成作業中に、集中力が途切れることが多くなり、度々作業を中断するようになっていました。
また仕事だけではなく、日常生活にも影響がで始め、まず外出が億劫になり外で出ることが極端に減っていきました。
以前の吉岡さんは、毎週末は家族と外出し、夏はキャンプ、冬はスノーボードをこなす程のアクティブな方でしたが、それが全くできなくなってしまいました。
できなくなったというより、その気力が起きないという言い方が正しいようです。
その他にも、天候に体調が影響されるようになり、雨の日などは特に体が重く、休日はベッドから起き上がることもできない状態になってしまいました。
【当時、吉岡さんが自覚されていた症状】
・記憶力の低下
・夜中に目が覚める
・多汗
・集中力の低下(時間を書けて鑑定書を書けない)
・頭痛(偏頭痛というより全体がズシンズシンくる重さ)
このような状態とは言え、自分の仕事が滞れば裁判所など鑑定書を待っている方々に多大な迷惑がかかることも有り、這ってでもやらざるを得ませんでしたので、吉岡さんは仕事のやり方を工夫することで、どうにかこなしていきました。
具体的には、鑑定書作成に30分かかるところを50分かける、負担が大きい仕事は体力がある午前中に集中させる等です。
それでもこれまでのパフォーマンスを100とすると、60程度しか出ていませんでしたので、本当に苦しい期間が続きました。
以前の状態を取り戻す
元々自分で起業するくらいですから、何事も能動的に取り組む性格で、この原因を調べるべく、インターネットや書籍、知人に相談してみるなど、ありとあらゆる情報収集に動きましたが、なかなかその原因にたどり着くことができませんでした。
吉岡さんが一番辛かったことは、体調のこともそうですが、この原因が掴めず、もしかしたら一生このままなのではないかという不安と、回復の可能性が見いだせない絶望感でした。
その時の心境をこう語っています。
「ぼんやりと、ただはっきりしない仄暗い灰色の空間を彷徨い続けているような、問題解決できない歯がゆさのある、モヤモヤした何かが体の中に滞留しているよう」
出来ることは何でもやりました。就寝前のストレッチ、湯船に浸かる時間を長くしリラックスさせる、ウォーキングをしてみる等。
これらの効果もあってか、以前に比べれば体調も良くなってきましたが、まだ状態は完全ではなく、気がつけば症状が出てからもう4ヶ月も経過していました。
そんな中、たまたま知人から「男性更年期障害」という言葉を耳にし、インターネットで検索してみると、たまたま私のXの投稿がヒットし、藁にもすがる思いで私に連絡してきましたということでした。
私から男性更年期障害の諸症状や原因をお伝えしたところ、まさに吉岡さんの症状とピッタリと一致しました。そして早速、男性更年期外来のある泌尿器科クリニックをご紹介し、通院されました。
クリニックで医師に症状を伝えたところ、やはり男性更年期障害の可能性が高いため血液検査をした結果、やはり通常の男性に比べてテストステロン値が極端に低いことがわかり、男性ホルモンの補充療法をしてもらうことになりました。
また、並行して男性更年期用のサプリメントも飲むことで、おおよそ2ヶ月でよくなり、今では以前のような状態にまで回復し、すっかり元気になって働かれています。
男性更年期の症状を感じられる割合
今回の吉岡さんのように、男性更年期障害の存在を知らないがために、原因がわからずその症状に悩み苦しみ、鬱に近い状態になる方も多くいらっしゃり、実際に厚労省の調査によると、男性更年期の諸症状を感じられている方は40歳以上で実に40%以上ものぼります。
男性更年期は特に40歳以上の男性であれば、いつ誰がなってもおかしくないものですので、常日頃から自分の体調と向き合い、何か変化があれば疑ってみることも日常生活を健やかに過ごすコツかも知れませんね。
(男性更年期の諸症状)
・うつ症状
・イライラすることが増える
・記憶力の低下
・勃起力の低下等