仕事と家庭に影響も。男性更年期障害について

なんだか最近、疲れやすい、気分の変動が激しい、やる気が出ない…そんな症状に心当たりはありませんか?実は、40代後半から50代の多くの男性が経験する「男性更年期」の兆候かもしれません。

更年期は、かつては女性特有の問題と考えられていましたが、近年の研究により男性にも同様の症状が現れることが明らかになっています。この記事では、男性更年期(男性更年期障害)について詳しく解説し、原因、治療法についても解説していきます。

更年期・更年期障害とは

更年期とは、ホルモンバランスに変化が起きる時期をいい40~50代の中年期に多くの人が経験します。女性の場合は閉経前後の時期を指しますが、男性の場合はもう少し曖昧で、テストステロン(男性ホルモン)の分泌が徐々に減少していく時期を指します。

男性更年期障害は、このテストステロンの減少に伴って現れる様々な身体的・精神的症状の総称であり、正式名称は「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群:Late-onset hypogonadism)」と呼ばれます。

男性更年期障害の典型的な症状

男性更年期障害の症状は多岐にわたり、複数の症状が重なることもあります。個人差も大きく、自覚しにくいケースも少なくありません。

代表的な症状は下記のようなものがあります。一見すると単なる疲労などが原因のものと見分けがつきにくいものですが、小さな体調変化も見過ごさないことが大切です。

  • 体力低下
  • 疲労感の増加
  • 筋力の減少
  • 性欲の低下
  • 勃起障害
  • 気分の落ち込み
  • イライラ感
  • 集中力の低下
  • 記憶力の減退
  • 不眠
  • ホットフラッシュ(ほてり)や発汗
  • 体毛の減少

男性更年期障害の代表的な症状に当てはまるものがあっても、症状の発現にムラがあり、果たしてご自身が男性更年期なのか、治療を必要とするものなのか判断することは難しいと思います。
そういった場合に男性更年期障害の症状の程度を客観的に評価する方法として、AMSスコア(Aging Males’ Symptoms scale)があります。これは17項目の質問に答えることで、症状の重症度を点数化するものです。

・26点以下:正常

・27〜36点:軽症

・37〜49点:中等症

・50点以上:重症

ただし、このスコアはあくまで目安であり、最終的な診断は医師による詳細な検査が必要です。

男性更年期障害になりやすい人の特徴

テストステロンの分泌は思春期から増加し、20代をピークにその後は、年齢を重ねるごとに減少していきますが、筋肉量や栄養状態、環境因子などによって個人差もあります。テストステロンの分泌低下を招く要因がある人は男性更年期障害になりやすいと言われ、下記に当てはまるという人は生活習慣の見直しが必要です。

  • ストレスが多い生活
  • 睡眠不足
  • 運動不足
  • 偏った食生活(特に高脂肪、高糖質の食事)
  • 喫煙
  • 過度の飲酒
  • 肥満

また、近年では芸能人や著名人のなかにも男性更年期障害について公表するケースが増えています。このような公表は、男性更年期障害に対する社会の理解を深める一助となっています。

男性更年期障害の原因

男性更年期障害の主な原因は、テストステロンの低下です。
テストステロンは男性の身体的・精神的健康を保つために重要なホルモンで、様々な役割を担っています。テストステロンの働きをよく理解すれば、自ずとテストステロンの減少に伴い体に起きる変化についてもお分かりいただけると思います。

テストステロンの役割

  • 男性の身体的特徴の発達
    • 骨や筋肉の形成促進
    • 思春期における第二次性徴の発現
    • 体脂肪の減少
    • 性欲、 性機能の維持
  • 精神機能への影響
    • 気力・集中力・記憶力の向上
    • 精神の安定化
  • 生活習慣病リスクの低減
    • 血管機能の強化、造血促進
    • 体脂肪燃焼の促進

テストステロン低下の影響

前述したように、テストステロンは身体的・精神的健康の維持に広範囲にわたって重要な役割を果たしています。
テストステロンの減少に伴い、それまで平衡を保っていた体の機能や精神的安定が少しずつ崩れていく可能性があります。テストステロン低下によって「以前にはなかった体の違和感」が出現し、継続的に続くことで症状が増幅し、男性更年期障害を発症します。

更年期障害を発症すれば、単に身体的な症状だけでなく、以下のような社会生活への大きな影響を与える可能性があります。

  • 仕事のパフォーマンス低下
  • 人間関係の悪化
  • 自信の喪失
  • うつ症状による社会的孤立
  • 性生活の問題によるパートナーとの関係悪化

これらの問題は相互に関連し合い、負の連鎖を生み出す可能性があるため、早期の対処が重要です。

男性更年期の発症時期

男性更年期障害の発症時期は個人差が大きいですが、一般的には40~50代にかけて症状が現れる人が多い傾向にあります。

40~50代といえば働き盛りであり、責任ある立場についている人も多く、不調を感じながらも放置し、悪化してしまうというケースもあります。

若年性更年期障害

近年、30代前半や20代でも更年期障害様の症状を訴える男性が増えており、若年性更年期障害と呼ばれます。

若年性更年期障害の原因は明確ではありませんが、過度のストレスや生活習慣の乱れ、環境ホルモンの影響などが指摘されています。

男性更年期障害の診断と治療

男性更年期障害の診断は、症状や健康状態についての問診、血液検査によるテストステロン値の測定、その他の検査を総合的に行って下されます。

診断やその後の治療を受ける際は、泌尿器科や男性更年期外来、内分泌内科などの専門医を受診することをお勧めします。

診察

  • 問診:症状や生活習慣について詳しく聞き取りを行います。
  • AMSスコア:AMSスコアの点数から症状を客観的に評価します。
  • 血液検査:テストステロン値や他のホルモン値、一般的な健康状態を調べます。
  • その他の検査:骨密度測定、前立腺検査など必要と思われる検査を行います。

治療法

男性更年期障害の治療は、症状の程度や原因によって異なります。

  • ホルモン補充療法:テストステロンを外部から補充する治療法です。注射や軟膏、ゲルなどの形で投与されます。
  • 漢方薬:八味地黄丸や牛車腎気丸などが用いられることがあります。
  • 生活習慣の改善:運動、食事、睡眠などの改善を通じて症状の緩和を図ります。
  • 心理療法:うつ症状などがある場合に行われることがあります。
  • その他の薬物療法:症状に応じて、勃起障害治療薬や抗うつ薬などが処方されることがあります。

男性更年期障害の対策や乗り越え方

男性更年期障害は放置すれば様々な症状が重なり、日常生活に支障を及ぼすこともあります。しかし、的確な治療を行えば健康を維持することができます。また、日常生活を見直すことも症状の改善や予防につながる可能性があります。

以下は、男性更年期障害の改善や予防のために日常生活で気をつけたいこととなります。

  1. 規則正しい生活リズムを保つ
  2. 適度な運動を行う(特に筋力トレーニングが効果的)
  3. テストステロンを増やす食材を摂る
    1. タンパク質:肉、魚、卵、大豆製品など
    2. 亜鉛:牡蠣、レバー、ナッツ類など
    3. ビタミンE:アーモンド、ひまわりの種、植物油など
  4. 十分な睡眠をとる
  5. ストレス管理(瞑想やヨガなどのリラックス法を取り入れる)
  6. 禁煙、節酒
  7. コミュニケーションを大切にする(家族や友人との対話)
  8. 趣味や生きがいを持つ

男性更年期障害は多くの男性が経験する可能性のある状態です。しかし、社会全体でみるとまだまだ男性更年期障害は、理解が十分ではありません。

重要なのは、症状に気づいたら早めに専門医に相談することです。男性更年期障害は恥ずかしいものではなく、予防や治療によって改善することができます。社会全体でこの問題に対する理解を深め、オープンに話し合える環境を作っていくためにもこちらのサイトでは、今後も男性更年期障害に関する情報を発信していきます。